2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K13271
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
藤澤 利正 東京工業大学, 理工学研究科, 教授 (20212186)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | フォノン共振器 / 二重量子ドット / 量子ナノデバイス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究「フォノン共振器と量子ナノデバイスのエネルギー変換」では、半導体表面のナノ構造によって形成したフォノン共振器中のフォノン系と量子ナノデバイスの電子系とのエネルギー変換に関する基本技術を確立することを目的として研究を進めている。具体的には、GaAs半導体表面に作成した周期的金属パターンにより表面弾性波フォノンの禁制帯や共振器を形成し、半導体中の二次元電子で形成される量子ドットや量子ポイント接合などの量子ナノデバイスのおけるフォノンとの相互作用を変調し、フォノン版共振器量子電磁力学の原理を応用して、電子系とフォノン系とのエネルギー変換を実現することを目指している。 平成27年度は、表面弾性波共振器中の二重量子ドットを用いて、フォノン支援トンネルを観測し、共振器構造によりフォノンの誘導放出・吸収過程に80倍程度の増強がみられることを確認した。交差型櫛型電極に高周波を印加してフォノン共振器にフォノンを蓄積し、その直後に二重量子ドット電荷量子ビットのエネルギー差をフォノンエネルギーに一致させることによりフォノン支援トンネルを誘起することに成功した。得られた結果は、フォノン共振器に蓄積されたフォノンを用いて、電荷量子ビットの状態間遷移をおこせることを示しており、目的としていたエネルギー変換のうちフォノンから電子状態への変換が達成されたことを示している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
フォノンを用いた量子状態制御に関する研究は、ここ数年で飛躍的に急成長しており、ヨーロッパで大きなプロジェクトが走っている。これに関連して、H28年5月には、量子音響学に関する国際会議(Quantum Acoustics; Surface Acoustic Waves meets Solid State Qubits)が開催される予定であり、トピックが限られた少人数の会議ながら4日間の会議が開かれる予定である。幸い、その招待講演として声がかかったので、本研究成果をアピールする予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度の結果ももとに研究を進め、量子デバイスのエネルギー循環の実現を目指すとともに、発展的・挑戦的な研究を展開する。具体的な方策は下記のとおり。 ・二重量子ドットを2電子系として働かせることにより、「フォノン→スピン状態」へのエネルギー変換に関する研究を進める。 ・表面弾性波共振器構造の材質・作成方法などの検討をおこない、性能の高い共振器を作製する。 ・量子ドットから発生したフォノンをフォノン共振器に蓄積し、電子系からフォノン系へのエネルギー変換に関する研究を進める。
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Causes of Carryover |
27年度の研究により、表面弾性波と電子スピンとの結合の可能性がでてきたので、それに関する理論研究を進める必要が生じた。結果として、電子系からフォノンへのエネルギー変換に関する研究(物品購入などの準備などを含む)を28年度に行うことになった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
新しいフォノン共振器構造を作製するためのフォトマスク、金属材料などの物品購入に充てる。
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