2015 Fiscal Year Research-status Report
プリンテッドエレクトロニクスを指向した金属酸化物ナノ結晶の超低温結晶成長/接合
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15K13280
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
栗原 正人 山形大学, 理学部, 教授 (50292826)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ナノ結晶 / 低温溶融塩 / 金属酸化物 / 結晶界面 / 低温結晶成長 / プリンテッドエレクトロニクス |
Outline of Annual Research Achievements |
低温溶融アルキルアミン硝酸塩(低温フラックス)を用いた金属酸化物の「超低温結晶成長/界面(粒子間)接合技術」の開発に本研究では挑戦する。これまで、硝酸イソプロピルアミン塩が150℃以下の低温で溶融し、あたかもイオン液体として振舞うことを利用し、アルミドープ酸化亜鉛ナノ結晶の低温結晶成長とガラス基板上への低温薄膜化に成功している。また、その薄膜は透明性の高い多孔質・導電膜であることを利用し、高濃度で吸着した光活性分子(色素、ルテニウム金属錯体)が、高い光電変換効率を示すことも見出した。その低温溶融中での結晶成長機構更に更に詳細に調べるため、多様な低温溶融塩の開発を進めた。例えば、イソプロピルアミンギ酸塩は、室温で溶融状態にあり、これを利用した酸化亜鉛の結晶成長を調べたが、むしろ、結晶を溶解させる能力が勝っており、本研究の目的からは利用価値が低いことを明らかにした。その他、イミダゾールギ酸塩など、複数のアミンと有機酸で低温溶融塩の機能を調べた結果、アルキルアミン硝酸塩が現時点で最も本研究の目的に適していると判断した。 アルキルアミン硝酸塩において、酸化亜鉛の結晶成長に与えるドーピングイオンの効果について調べた。Al3+、Fe3+といった3価のイオンが含有した場合に、顕著な結晶成長の促進効果があることを明らかにした。これまで、ガラス基板上での酸化亜鉛の結晶成長/薄膜化を進め、それに基づき、成長機構を推測してきた。アルキルアミン硝酸塩を揮発させない密閉した状態で、酸化亜鉛ナノ微粒子の結晶成長の時間変化を追跡した。驚いたことに、低温溶融塩中で、10 nmかそれ以下の小さなナノ微粒子がマイクロメーターを超える綺麗な結晶面を持つ単結晶に成長することを見出し、今後、結晶成長機構解明への大きな進展となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
概ね計画通りに研究が進んでいる。27年度の研究計画では、酸化亜鉛の結晶成長に最適な低温溶融塩の選別を行うこととしたが、上記の業績のように、アルキルアミン硝酸塩、特に、イソプロピルアミン硝酸塩が、現時点で、最も本研究目的に合致することが分かった。28年度以降では、イソプロピルアミン硝酸塩に絞って、研究計画を実施する。また、27年度の研究計画だったドーピングイオン効果についても、3価のイオンが結晶成長に大きく寄与することが分かったことから、当初の計画通り、28年度の研究計画を実施できる状況である。また、高濃度で吸着した光活性分子(色素、ルテニウム金属錯体)が、高い光電変換効率を示すことも見出しており、低温溶融塩法から作製した酸化亜鉛膜の機能評価として予想を超える進展もあった。
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Strategy for Future Research Activity |
概ね27年度計画していた研究は順調に進んでいる。28年度は、酸化亜鉛系のサブミクロン結晶の作製法の開発を実施する。また、同時に、その粒子同士の界面接合について低温溶融塩法を用いて開発する。低温溶融塩法を用いて作製した酸化亜鉛系薄膜の機能評価を進める。Hall効果によるキャリアー密度・移動度などを評価し、更なる薄膜の機構化への指針を見出す。新たな展開として光電変換のためのp型半導体膜としての機能評価も進める。
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Causes of Carryover |
人件費・謝金の支出額で、次年度の繰越額が大きくなった。これは、当初、予定していた研究員が転出したことによる。一方で、研究の推進では、東北大学との共同研究を開始するなどし、研究室所属の大学院生の協力もと進めることができた。旅費の支出が少なくなったことについては、研究代表者が、学科長・専攻長になり、業務多忙のためである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究計画に示したように、Hall効果や光電変換のための半導体膜としての機能評価を新たに計画しており、その測定・分析の実施に必要な物品等の購入を計画している。
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