2015 Fiscal Year Research-status Report
合金ナノ粒子の革新的合成法の開発:リン化合物から合金へ
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15K13286
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
佐藤 良太 京都大学, 化学研究所, 助教 (80629890)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 無機ナノ粒子 / リン化合物 / 合金 / ガルバニック置換反応 / パラジウム / 固体触媒 |
Outline of Annual Research Achievements |
金属ナノ粒子における金属核の合金化は、ナノ粒子の物性を制御する代表的な手法の一つに挙げられる。基金族と合金化させる金属種を任意に変えることができれば、基金族の機能や特性を調整できるだけではなく、両金属が各々に有する機能の複合化や、さらには単一金属では示さないような新規特性の発現なども期待できる。近年では、ナノサイズ化によってバルクでは存在し得ない合金相の発見も報告されており、新奇物質の創成による革新的な材料開発の観点からも、合金ナノ粒子に関する研究が今後より一層活発になることが容易に推測される。 このような背景の中、我々はこれまでにPdとPが原子レベルで混合された非晶質Pd-Pナノ粒子が、粒径や単分散性を保持したまま、様々なPd基合金ナノ粒子に変換する新奇合金化現象を見出している。この現象を利用することで、単分散Pd基合金ナノ粒子の粒径および合金種を、たった一つの合成手法で極めて精密にかつ容易に制御することができる。 初年度は、この新規現象のメカニズムをより詳細に検証するとともに、種粒子として用いることができるPd-Pナノ粒子の結晶性や、合成可能な合金種について特に詳しく調査した。メカニズム検証を行ったところ、Pd-Pナノ粒子中のPは原子状のPよりも酸化数が低い状態である一方、反応後に検出されたPはリン酸塩中のPのような高酸化状態であることが判明した。さらに、Pd-Pナノ粒子が比較的高いフェルミ準位を有する金属的な電子構造を有していることが明らかとなった。以上の結果は、本新奇現象が「合金ナノ粒子における元素選択的ガルバニック置換反応」であることを強く示唆しており、これまでにこのような現象の報告例はない。また、非晶質Pd-Pナノ粒子に加え、結晶性Pd3Pナノ粒子においても同様の現象が起こり得ることを確認し、新規にA1-CoPd3およびB2-PdInナノ粒子の形成にも成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究計画調書に記載した本年度の計画として(1)Pd基合金ナノ粒子の展開、(2)Pd-Pナノ粒子の結晶性および組成比の検討、(3)Pd以外のリン化合物および三元系リン化合物ナノ粒子への応用の3項目が挙げられる。(1)および(2)に関しては、「研究実績の概要」に記載した通り、新たなPd基合金ナノ粒子の合成に成功し、結晶性も非晶質に限らないことを明らかにすることで、本現象の汎用性をより一層高めることに成功した。(3)に関しても、すでに検討中であり、克服すべき課題等が得られ始めている。以上に加え、研究計画調書に本年度の計画として記載はなかったものの、「研究実績の概要」の通り、合金化メカニズムを提唱する上で極めて有用な結果を得ることができた。この知見は、Pd以外のリン化合物に応用する上で極めて有用な指針となり、来年度における(3)の進捗をより加速することが期待される。 以上の理由から、今年度進捗状況として、当初の計画以上に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度が研最終年度となるため、本年度において検討途中である(3)Pd以外のリン化合物および三元系リン化合物ナノ粒子への応用を引き続き検討するとともに、当初の研究計画通り、合成した単分散合金ナノ粒子の(4)高性能電気触媒等の機能性材料への応用を目指す。具体的には、来年度に購入予定である電気化学アナライザーを使用し、電気化学的な分析から、比表面積や物質の吸脱着特性、特定の電気化学反応における触媒活性等を測定することで新規特性の発見を試みる。 以上の検討により、我々が発見した新奇合金化現象を、多種多様な単分散合金ナノ粒子の合成を可能とする極めて汎用性の高い手法へと昇華させると当時に、実用性の観点からも高い有用性有することを証明する。
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Causes of Carryover |
研究の展開と進捗に合わせて、装置に求められる性能が変化したため、物品として11月頃に予定していた電気化学アナライザーの購入時期を来年度に変更することが適切と判断した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額については、当初の計画通り電気化学アナライザーの購入に充て、翌年度請求分の助成金の一部についても、電気化学アナライザーの性能向上のための資金とする予定である。
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