2015 Fiscal Year Research-status Report
人工設計ペプチド集合体を用いた放射性/安定レアメタル選択回収システム
Project/Area Number |
15K13289
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
田村 厚夫 神戸大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (90273797)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ナノ材料 / 環境材料 / ペプチド / 設計 / レアメタル |
Outline of Annual Research Achievements |
レアメタルは希少かつ鉱山が地球上の一部地域に集中して偏在化しているため、昨今、価格高騰や輸出規制が問題となっている。一方、原発事故で大きな社会問題となっている放射性元素についてレアメタルを含む金属イオンの回収が喫緊の課題となっている。そこで、これらのメタルを選択的に検出し回収する全く新規のリサイクル技術を開発することを目的とする。 この分子システムは、1)結合、2)検出、3)選択、4)センシング、5)回収、の5段階から構成される。本年度は、主として1)2)を中心に完成させ、この結果を既存技術の補完または克服に起用させることで、最終的に5)への橋渡しとする。標的とするレアメタル(アース)として用いた金属は、その有用性と深刻度より、ディスプロシウム、ネオジム、白金、パラジウム、ユーロピウム、ホルミウム、ツリウム、インジウムおよびセシウムとした。また、金で成功しているメタル結合に伴ってあたかもリトマス紙が酸性度を検知するかのごとく呈色することで容易に目的金属の有無を検出するセンシングシステムを作るため、新たに白金をターゲットとした。ペプチド設計では、2種類の基本骨格を用いた。即ち、24アミノ酸残基からなるαへリックス型の金属イオン結合型人工設計ペプチド、および12残基からなる環状ペプチドである。 この結果、パラジウム、ネオジムウ、およびツリウムに結合するペプチドの創製に成功した。また、白金のセンシングとして褐色への変化を視認することができた。このことは、1)の結合で新たな分子種の認識が可能であること、および2)の検出についても金以外のものに適用可能であることを示したものであり、4)につながる成果となった。また、放射性に関連する金属として、セシウムと相互作用する環状ペプチドを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
この分子システムは、1)結合、2)検出、3)選択、4)センシング、5)回収、の5段階から構成される。当初の予定では、本年度では、1)および2)の達成を目指していたが、これらは概ね達成し、一部早めに4)へ到達することができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、項目3)の選択性向上、4)のセンシング力の向上、および実際に5)の回収までに至る手法の開発を行う。 選択性については、さらなるペプチドの改良を行う。この際、種々のレアメタルに対する結合を、滴定型熱量測定による厳密な熱力学的パラメーターの獲得、および核磁気共鳴測定による原子レベルでの詳細な構造解析を行うことで、物理化学的に正しいデータを蓄積し、より精緻な設計を行うこととする。 5)につながる観点として、担体との相互作用を改良することによる吸着強化と再利用化を試す。つまり、ペプチド分子単体だけを利用するのではなく、紙などの担体と結合させ安定な素材とするため、以下の性能向上を図ることとする。1)紙などの担体への吸着能の上昇による高効率化、2)安定性の向上による再利用可能性の獲得。このため、へリックスバンドルの安定化を目指す。具体的には、会合度を上昇させ、高分子化し、物理的に紙にからみやすくする。さらに、外側のアミノ酸改変により、化学的性質(疎水性、極性、結合性)を変化させて、担体と化学的に好ましい相互作用をさせなじみやすくする。 さらに実用上選択性を向上させる手段として、紙を積層させることで多層構造を形成させることが挙げられる。各層の選択性がべき乗として効いてくるので、結合定数の差が3倍程度であっても、例えば4層にすれば3の4乗(=81倍)の差異を生み出すこととなる。
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Research Products
(5 results)