2015 Fiscal Year Research-status Report
陽極酸化ポーラスアルミナにもとづく負屈折率物質の作製とスーパーレンズへの応用
Project/Area Number |
15K13292
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
益田 秀樹 首都大学東京, 都市環境科学研究科, 教授 (90190363)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ポーラスアルミナ / 負の屈折率媒体 / スーパーレンズ |
Outline of Annual Research Achievements |
H27年度は,下記に示す項目について検討を行った. [1] 高アスペクト比集光系の形成に関して検討を実施した.十分な作動距離を有するスーパーレンズを作製するためには,負屈折率媒体の厚さを光波長よりも十分に厚くする必要がある.スラブを形成するポーラスアルミナの厚さは,陽極酸化時間に依存し,陽極酸化時間を長くすることにより厚膜化が可能となるが,同時に,表面の溶解が起こることにより厚膜に限界を生じる.これまでの検討で,ミリメータースケールの厚膜化が可能なことが確認されており,十分な作動距離を有するスーパーレンズの作製が可能になるものと考えられる.本年度の検討の結果,サブミリメートルスケール厚さのポーラスアルミナの細孔内部に金属を電析することで,ポーラスアルミナと金属細線からなるコンポジット構造体の形成が確認された. [2] 高アスペクト比集光系においては,細線の長さ方向に光が伝搬することから,細線による光の減衰が大きな課題となる.このような点から可視光域においてはAgが一般に用いられる.これまでの検討においても,規則的な細孔配列を有する陽極酸化ポーラスアルミナに金属(Ag)を様々な形で充填することにより,可視光域において負屈折率を示す媒体が得られることが確認されている.本年度は,Agに比べてより低損失な材料であるAlの電析法に関して検討を行った.その結果,ポーラスアルミナとAl細線からなるコンポジット構造の形成が確認された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究当初の計画が順調に遂行されているため.
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Strategy for Future Research Activity |
下記の項目に関して検討を進める. [1]スーパーレンズの集光サイズの微細化には,陽極酸化ポーラスアルミナの細孔周期の微細化が必須である.陽極酸化時の化成電圧の低下にもとづき,細孔周期の微細化を行う.陽極酸化ポーラスアルミナの細孔周期は,化成電圧に対し2.5nm/Vの割合で変化する.次年度では,十分微細な集光サイズの実現が期待される周期20nm程度の細孔周期を有する陽極酸化ポーラスアルミナの適用を予定している. [2]作製した負屈折率媒質のスーパーレンズへの適用に関して検討を行う.負屈折率媒体の表面に,光波長より小さな直径のナノ開口を有する金属マスクを形成する.マスクの形成は電子線描画装置を用いた加工プロセスにより行う.金属マスクに光を照射すると,マスクの開口部を透過した光は負屈折率媒体により集光される.このときの作動距離,焦点直径,および,焦点深度の評価は,フォトレジストにもとづくパターニング,あるいは近接場光学顕微鏡により行う. [3]得られた構造体の長作動スーパーレンズへの応用に関して検討を行う.十分な厚みを有するポーラスアルミナを出発構造とする金属細線集合体を作製し,ダブルフォーカス特性の検証を行う.集光位置の検証を行うほか,光源位置に微小パターンを設置し,結像位置における集光解像度特性の検討を行う.集光特性の評価には,近接場光学顕微鏡のほか,感光性レジストを用いるパターニングを用いる.
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Causes of Carryover |
光学素子,試薬,実験器具の購入量が予定より少なかったため次年度使用額が生じた.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
H27年度の繰越金によって老朽化が進み温度制御に不具合が生じている陽極酸化用恒温水槽装置の購入を行う予定である.
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