2015 Fiscal Year Research-status Report
磁場印加で薬剤を放出する多層カプセルの開発-その微細構造と超常磁性の複合制御
Project/Area Number |
15K13298
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
藤枝 俊 東北大学, 多元物質科学研究所, 助教 (60551893)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ナノ粒子 / ドラッグデリバリー / 酸化鉄 |
Outline of Annual Research Achievements |
リン酸鉄粒子をアルカリ溶液へ浸漬すると、リン酸鉄が溶解した直後に酸化鉄ナノ粒子がその場で再析出する脱成分反応が粒子表面から内部に向かって徐々に進行するため、酸化鉄ナノ粒子で構成された多層カプセル粒子が得られる。本研究では、その微細構造および磁気特性を複合的に制御することにより、交流磁場の印加で内部の薬剤を調節して放出できる機能を備えたドラッグデリバリー用粒子の開発を目的とする。上述の脱成分プロセスで作製した多層カプセル粒子は、フェリ磁性体のマグヘマイト(γ-Fe2O3)のナノ粒子で構成されており、超常磁性を示すが、粒子のサイズが小さいため、交流磁場を印加しても殆ど発熱しない。そこで、本年度は、多層カプセル粒子を構成する酸化鉄ナノ粒子のサイズおよび超常磁性の制御に取り組んだ。粒子のサイズを増大させるために、3価の鉄のみで構成されたマグヘマイトに大気中で熱処理を施すと、ヘマタイト(α-Fe2O3)への変態が生じる。ヘマタイトは反強磁性体であり、交流磁場を印加しても殆ど発熱しない。そこで、マグヘマイトのナノ粒子で構成された多層カプセル粒子に還元雰囲気下で熱処理を施した。その結果、マグヘマイトを構成する鉄の一部が2価に還元されてマグネタイト(Fe3O4)が形成されるため、ヘマタイトへの変態が抑制されることが明らかになった。さらに、適切な条件下で還元熱処理を施すことにより、交流磁場の印加で発熱する多層カプセル粒子の作製に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
28年度に取り組む予定であった交流磁場の印加により発熱する酸化鉄ナノ粒子で構成された多層カプセル粒子の作製を本年度に実現することに成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
29年度に行う予定であった計画を前倒しで行う。具体的には、作製した多層カプセル粒子にモデル薬剤として抗ガン剤を搭載し、その安定性および交流磁場印加によるその放出特性を調べる。
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Causes of Carryover |
今年度の研究を効率的に遂行したことで次年度使用額が発生した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度の予算と合わせて、研究遂行に有効に使用する。
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Research Products
(5 results)