2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K13303
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
岡田 正弘 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 准教授 (70416220)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松本 卓也 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (40324793)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | セラミックス / ジルコニア / ナノ構造制御 / 結晶相制御 / 超弾性 |
Outline of Annual Research Achievements |
超弾性あるいは形状記憶効果は、結晶相の応力誘起相変態に起因する。ジルコニア単結晶体も超弾性や形状記憶効果を示すことが報告されており、応力によって正方晶から単斜晶に相変態する。その最大ひずみは理論上15%に達するが、現実のジルコニア系セラミックス(多結晶体)の最大ひずみは2%以下である。 本研究では、広範囲の応用が期待できる超弾性セラミックスの創出を目指し、正方晶ジルコニア・ナノファイバー単結晶体からなるセラミック・ファブリックの合成とその力学的および生物学的特性の評価を行う。 平成27年度においては、まず、水熱条件下におけるナノファイバー状単結晶育成法の条件を検討し、単斜晶ジルコニア・ナノファイバーを調製した。次に、調製した単斜晶ナノファイバーを安定化イオンであるイットリウム、セリウム、あるいは、カルシウムを含む塩と混合し、600℃~1000℃において高温処理することで、単斜晶から正方晶への変換を試みた。この際の処理条件を検討し、各種塩の量および高温処理温度を最適化することで、原料となる単斜晶ナノファイバーの形態を維持したまま、正方晶へ結晶相を変換する条件を見出した。この際、後添加塩/ジルコニアの比率が大きく、また、処理温度が高い場合にジルコニアへのイオン導入量が増加することを明らかとした。さらに、同一形状の単斜晶ジルコニア・ナノファイバーおよび正方晶ジルコニア・ナノファイバーを用いて機械的試験を行った結果、曲げレジリエンスが増加し、靱性が向上することを見出した。 以上のように、平成27年度の検討によって、水熱法による単斜晶ジルコニア・ナノファイバーの調製条件と後処理(結晶相安定化イオン存在下での焼成)による結晶相転換条件を明かとした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度の検討においては、水熱法による単斜晶ジルコニア・ナノファイバーの調製と後処理(結晶相安定化イオン存在下での焼成)による結晶相転換を目的とした。「9.研究実績の概要」に記載したように、使用する安定化イオンの種類、量、および、焼成温度の影響を検討することで目的を達成したため、「(2)おおむね順調」と自己評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの検討の結果得られた知見をもとに、正方晶ジルコニア・ナノファイバーの形態(繊維径、繊維長)を最適化する。作製した試料の機械的特性について検討するために、万能材料試験機を用いて、曲げ応力-ひずみ曲線から弾性率および永久変形量を定量化する。また、各処理後に得られたナノファイバーにおける各イオンの分布状態を定量化し、ナノファイバーの形態・密度・組成と力学的特性の関連性を見出して材料設計の指針とする。さらに、力学的特性を最適化した試料の表面特性を評価し、生物学的特性を評価する。以上の検討を通じて、超弾性を示す新規なソフトセラミックス材料の創出を目指す。
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Causes of Carryover |
ジルコニアの焼成に必要な高温電気炉が使用不可能となり、それに代わる高温電気炉を購入し、旅費および人件費を削減したため、当初計画との差額が若干発生した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額分は、ジルコニア合成のための消耗品費として使用する。
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Remarks |
第4回日本バイオマテリアル学会中四国シンポジウム優秀発表賞(2016.2.26)
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Research Products
(3 results)