2015 Fiscal Year Research-status Report
新奇積層デバイス創製のための液体界面を利用したその場積層法の開発
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15K13305
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Research Institution | Kyushu Institute of Technology |
Principal Investigator |
下岡 弘和 九州工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (50253555)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 無機/有機積層膜 / 大面積 / 低温合成 / ナノクリスタル / 固体基板フリー / フレキシブル自立膜 / ナノ薄膜 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、液体の表面での「その場積層」という汎用性の高い新しい積層膜作製法を確立し、そのことにより様々な無機、有機材料系で大面積かつナノスケールの膜厚を有するフレキシブルな積層膜を実現することである。平成27年度は、モデル系としてBaTiO3/ポリ乳酸の無機/有機系、BaTiO3/SrTiO3、BaTiO3/Nb:SrTiO3の無機/無機系を検討した。下層液としては、流動パラフィン、1,1,2,2-テトラブロモエタンを比較した。両下層液上で作製したBaTiO3膜はいずれも組成ずれがなく、低温熱処理でBaTiO3結晶を生成した。表面張力が大きい1,1,2,2-テトラブロモエタンの場合は、得られる膜の膜厚は流動パラフィン上よりも薄く、大面積の膜を得ることが可能だった。流動パラフィン上では、膜厚40nm~数百nm、アスペクト比10000~100000程度の膜が、1,1,2,2-テトラブロモエタン上では、膜厚10nm程度、アスペクト比10000000もの大面積の膜が得られた。BaTiO3/SrTiO3、BaTiO3/Nb:SrTiO3では、走査電子顕微鏡の反射電子像から、BaTiO3ゲル膜表面にSrTiO3とみられる数十nmより薄い膜が積層していることが観察された。BaTiO3/ポリ乳酸積層膜については、PETシートなどの基板に転写し、微構造観察を実施中である。その場積層によってBaTiO3膜上に形成されたポリ乳酸膜は数nmオーダーで分析が困難であるが、下層液上のBaTiO3ゲル/ポリ乳酸積層膜をPETシート上に複数回転写して得たBaTiO3ゲル/ポリ乳酸/BaTiO3ゲルのサンドイッチ構造を観察し、BaTiO3ゲル間に数nmの薄層の存在を確かめた。この層の厚さは、予想される平衡膜厚と同じ膜厚領域であるため、膜形成メカニズム解明の手がかりとなると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
BaTiO3/ポリ乳酸系でのポリ乳酸膜の形成メカニズムが予想通りである可能性が高いと思われるが、その通りだとすれば、非常に薄いシングルナノオーダーの極めて薄い膜になる。そのため、その明確な確認に苦戦している。ナノテクノロジープラットフォーム事業により九州大学超顕微研究解析センターの支援を得て透過電子顕微鏡による解析を進めているが、有機シート上に転写したフレキシブルな膜であるため、観察用の試料作製に試行錯誤を重ねている段階である。BaTiO3/SrTiO3系では、膜形成順序を入れ替えてSrTiO3膜から先に作製した場合に高密度のSrTiO3膜が得られない問題が生じており、原料溶液の高濃度化手法の改善が必要と考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
下層液界面に形成した無機/有機積層膜の有機層を詳細を検討する方法は幾つか考えられるが、まずは明確な確認のためのモデル試料として有機層の厚い試料を複数回のその場積層操作により作製する。SrTiO3膜の高密度化についての検討は、平成28年度の主な目的である積層膜の結晶配向制御とも密接に関係するため、オレイン酸による界面シード層の導入についての検討と平行して実施する。積層後に焼成した積層膜については、予定通り微構造、結晶構造、誘電特性を評価して積層の効果を検討する。
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Causes of Carryover |
累計額に54円の誤差を生じたが、ほぼ計画通りに実施できている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度分と合算して使用する。
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