2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K13307
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
河合 武司 東京理科大学, 工学部, 教授 (10224718)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | UVレーザ / 中空粒子 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は気水界面の展開した高分子ナノ粒子に水銀ランプの紫外線 (254 nm)を照射すると、中空粒子が得られることを見出した。本研究では、指向性の高いUVレーザ光(266 nm)を通常の紫外線ランプの代わりに用いて、空孔サイズや空孔位置の精密制御にチャレンジすることを目的としている。本年度は、(1)UVレーザを導入した照射システム(光学系)の構築、(2)レーザーシステムによる中空化の検証、(3)マイクロレンズを用いた空孔位置の制御について検討した。 光学ベンチ上にUVレーザ、光学レンズおよびミラーとを組み合わせて照射システム系を組み上げた。具体的には、UV光を気水界面のポリスチレン粒子に対して垂直に入射する系と斜入射する系とを構築した。UVレーザを気水界面のポリスチレン粒子に対して垂直方向から照射させて空孔形成について検討した。その結果、通常の紫外ランプと同様の空孔が確認できた。すなわち、空孔形成には266 nmの紫外線も有効であることが実証できた。さらにレーザ光を斜めから入射した場合、空孔はポリスチレン粒子の中央から外れた位置に形成することも確認できた。これらの結果から、集光角の変化によって孔の位置が制御できることがわかった。 マイクロレンズとレーザ光を組み合わせて、空孔の深さ方向の制御について検討したが、空孔深さはほとんど変化しなかった。マイクロレンズとポリスチレン粒子のサイズが大きく異なるためであることが判明した。したがって、数ミクロンサイズのマイクロレンズや粒子をレンズとして使用する必要があることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、(1)UVレーザの垂直照射および斜入射システムが構築できたこと、(2)構築したレーザ照射システムにより中空化を実証できたこと、および(3)レーザの入射角により空孔の形成位置が制御可能であることを明らかとしたことから、ほぼ初年度の目的が達成できた。また、空孔位置の深さ方向の制御はまだ達成できていないが、使用レンズの大きさが問題であることが明らかとなり、今後の方針が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、下記の3つに挑戦する。 (1) 斜入射システム:初年度にUVレーザを粒子膜に対して斜めから照射すると空孔位置が制御できることを明らかとしたので、入射角と試料の回転を組み合わせて、複数の空孔を持つ中空粒子作製の最適条件について検討する。さらに粒子サイズの影響についても総合的に検討し、空孔の数と位置の精密制御を目指す。中空粒子の評価は3次元画像が得られるTEMトモグラフ法を用いて行う。 (2) 集光システム:水銀ランプでは最小の加工分解能は30 nm程度であるが、指向性の高いレーザの方が焦点のスポットサイズが小さいと考えられるので、その分解能の向上が期待される。そこでマイクロサイズの粒子をレンズに利用して、レーザとレンズ系の組合わせて空孔の深さ方向の制御について検討する。レンズ系が機能しないときは、媒体の屈折率を変える方法を利用する。粒子膜を水に浮かべて、空気側(屈折率n=1.00)からではなく、水側(n=1.33)から紫外線を照射すると、空孔は中心より上部にできることを確認した。すなわち、屈折率の大きな媒体を用いると空孔位置は中心部から表面側に移動しすることから、粒子周囲の媒体によって加工位置が制御できると考えられる。 (3)粒子以外の中空化:斜入射システムと集光システムの技術が確立できれば、光の集束度と入射角を同時に制御して中心部以外の望みの場所・形状の空孔が作製できる新規ナノ加工技術となる。また、複数の空孔を持つナノ粒子は、我々が既に開発した「空孔内への無機粒子の充填法技術」との組合せによって複雑な機能性コアシェルナノ粒子に変えることもできる。そこで、粒子以外のポリマー薄膜などの材料への中空化についても挑戦する。
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Causes of Carryover |
旅費およびアルバイト代などの謝金費について学内予算で賄うことができたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
主に物品費および使用実績のない旅費に使用する予定である。
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