2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K13320
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
山本 貴富喜 東京工業大学, 理工学研究科, 准教授 (20322688)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 構造色 / マルチフィジックスセンサー / ナノ加工 / ナノフォトニクス / 面分布型センサー |
Outline of Annual Research Achievements |
モルフォ蝶の鱗粉に代表されるような数100nmサイズの樹状構造の変形で制御される「構造色」を利用して,同一の構造で様々な物理量を計測するマルチフィジックス構造色センサーを実証することが本研究の目的である。さらに,構造色センサーの大面積化と大量生産手法として,新たに開発した光硬化性シリコーンゴムと真空紫外光を利用した,モールディングによる構造色センサーの複製技術にも挑戦する。 本年度は,研究計画の通り,半導体微細加工技術で構造体センサーを作製する手法の開発に着手した。研究の効率化のため,まずは数mm角程度の小面積で作製を行った。構造色センサーの作製手順は次の通りである。まず,フォトリソグラフィーでセンサーの鋳型となるようなパターンをフォトレジストで形成しておき,構造色センサーの必要レイヤー分だけイオンビームスパッタでガラス基板上にSiとSiO2の多層膜を積層した。この時,シミュレーションの評価も平行して進めるため,各レイヤーの膜厚は数10~数100nmで作製した。次に,鋳型となっているレジストを剥離(リフトオフ)後,Si部分をドライエッチングで樹状の構造体センサーを作製した。ところでこの際,まずは深さ方向へ垂直に異方性エッチングを行い,次にエッチング条件を変更してSiのみの選択的等方性エッチングに切り替えることでサイドエッチングを進め,所望の樹状構造を作製した。なお,反射率を向上させたオプションとして金属とSiの多層膜も検討した。その結果,予定通りの誘電体多層膜による構造色構造の作製に成功した。 次に,作製した構造色構造に対して,温度変化させながらその反射率特性を評価したところ,温度上昇に対してスペクトルが変化する様子が観察され,狙い通り,熱膨張による構造変化で温度を光に変換して計測可能であることが実証された。さらに,屈折が異なる溶液中でも狙い通りにスペクトルが変化することが実証された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初計画通りに構造色構造のプロトタイプの作製法の開発に成功した。さらにその構造を利用した分光測定により,屈折率変化を反射スペクトルの変化として検出することに晴雨している。さらには,当初計画には無かったものの,温度変化による熱膨張由来の構造-反射スペクトル変化の検出にも成功しており,単一構造で様々な物理量を計測する本手法の物理的なメカニズムの実証に成功した。 さらに,従来の誘電体多層膜の設計に用いられる,光の干渉理論を応用して数値計算する手法を開発し,そのシミュレーション結果と実測値が非常に良い一致を示す結果が得られた。このことは,構造色による反射スペクトルが干渉理論で説明が出来ること,さらにその計算手法を設計ツールとして利用できることを示唆するものであり,構造色センサーの実用化への展開も視野に入る成果が得られた。以上,当初計画を達成すると共に,さらに先に進むことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
当初計画の通り,現在の数mm各サイズから実用化のための大量生産に適した作製方法の実現を目指す。まずは,剥離性が良いため高精度の型取り性を有する,シリコーンゴムのモールディングによる構造色センサーの作製法を開発を目指す。 具体的には,今年度作製したパターンの"反転パターン"を作製し,これを鋳型としてシリコーンゴムでの型取りにより,構造色センサーをコピーする(ネガ型から反転されるので,ポジ形が作られる)技術に挑む。微細な3D形状を高精度に型取りするにあたっては,従来の熱硬化型シリコーンゴムの欠点である熱収縮が生じない利点を持つ,企業と共同で開発した光硬化型シリコーンゴム(X-34-4184,信越シリコーン)を用いる。また,柔らかいシリコーンゴムの硬さを制御して最適なセンサー構造とするため,申請者が開発した真空紫外光による処理技術を用いる。波長172nmの真空紫外光を照射すると,照射量に応じてシリコーンゴム中のメチル基を酸化してガラス化することができるので硬さを制御することができると共に,ゴムとガラス間での屈性率制御も可能となる。この技術により,最適な硬さと屈折率を有する構造色センサーの作製に挑戦する。
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