2015 Fiscal Year Research-status Report
フォトニック結晶マイクロゲルによる微小空間領域の物理化学量可視化
Project/Area Number |
15K13327
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
尾上 弘晃 慶應義塾大学, 理工学部, 講師 (30548681)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岩瀬 英治 早稲田大学, 理工学術院, 准教授 (70436559)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | マイクロ・ナノデバイス / モニタリング / フォトニック結晶 / ハイドロゲル / マイクロ流体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的はマイクロ流体デバイス技術により,直径10マイクロメートルオーダーのフォトニック結晶(PC)マイクロゲルの作製し,微小領域空間のpH・温度・イオン濃度・化学物質濃度などの物理的・化学的な情報量を,直接可視光領域の光の波長として高感度で取得することをための計測技術の確立を目指すものである. H27年度は,刺激応答性を持つフォトニック結晶ゲルの作製条件の検討を行った.フォトニック結晶を作製するための方法として,溶媒揮発法と脱塩法の両方により光学結晶の作製を行った.また刺激応答性ゲルとして,温度応答性のあるpNIPAMを用いた.結果として,両手法ともpNIPAM内で可視光領域のフォトニック結晶の作製に成功した.温度応答性による反射波長ピークの変化を計測した結果,脱塩法によるフォトニック結晶ゲルが溶媒揮発法のものに比べて,より大きいピーク波長のシフトが確認された. また,刺激応答性フォトニック結晶ゲルのマイクロビーズ化の前段階の検討実験として,ゲルの微小化による感度の向上を定量的に評価するために,マイクロ流路を利用してフォトニック結晶及びフォトニック結晶ゲルの微細加工に取り組んだ.異なる反射波長ピークを持つフォトニック結晶ゲルをマイクロ流路に交互に流し込み,微小領域における光学特性の計測方法の確立,及び評価を行った.結果,幅と高さ100マイクロメートルのフォトニック結晶ゲルにおいて,顕微鏡と分光器による計測方法により反射波長のピークを計測することに成功した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画の通り,H27年度はフォトニック結晶ゲルの作製方法,及び光学計測技術の開発に取り組んだ.物理化学量に応答するフォトニック結晶ゲルの作製に成功し,また微細加工にも成功した.さらにそれらの計測技術も確立したため,概ね順調に研究が進展していると評価している.
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Strategy for Future Research Activity |
今後はH27年度の結果を踏まえ,以下の2点の研究に取り組む. (1)微小領域空間計測のためのヤヌス型PCマイクロゲル:微小領域空間での物理化学量可視化のため,マイクロゲルビーズ内2種類のPCを構築する.これにより,微小領域空間に異なる格子定数の結晶を持つ2波長計測可能な「ヤヌス(Janus)」PCマイクロゲルの作製を試みる.使用する層分離のための高分子の種類・濃度,コロイドの結晶化条件と両立などが検討項目である.この水性2層系による手法が困難な場合,マイクロデバイスの小型化により直接10マイクロメートル径の液滴を作製することも代案として考慮する. (2)物理化学量の可視化によるセンシング:PC温度・pH・光量・イオン濃度などの物理化学量の絶対値の取得をおこなう.最初は,複数種類の反射波長を持つPCマイクロゲルを同時に用いることで,広範囲空間の物理化学量の取得を目指す.PCマイクロゲルをゲルシートなどに封入し,分光器を用いずに目視による判定及び簡易な光学フィルタとフォトディテクタを用いることで,皮膚の上pHや化学物質計測,また環境計測のための光量・温度・pHなどを試み,ヘルスケアセンサや環境モニタリングセンサ応用への適用性を検討する.同時に,本手法の利点の一つであるロバスト性の検証のための長期計測(数ヶ月)などにも挑戦する.また,最終目標である微小領域空間の物理化学量の計測を行う.具体的な適用先としては,細胞培養ディッシュ上にヤヌスPCマイクロゲルを分散させることにより,一細胞レベルの空間解像度でのpH・温度の分布の計測や,代謝物の循環や分泌性シグナル因子の空間伝搬の視覚化を目指す.
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Causes of Carryover |
H27年度に開催の国内及び国際学会への旅費を計上していたが,他の助成金による旅費補助を獲得したため.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
H28年度に開催予定の国際会議への旅費として使用を計画している.
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Research Products
(3 results)