2015 Fiscal Year Research-status Report
磁気ドメインの高感度ベクトル可視化手法の開発と光によるドメイン制御
Project/Area Number |
15K13330
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
貴田 徳明 東京大学, 新領域創成科学研究科, 准教授 (30587069)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 磁気ドメイン / テラヘルツ電磁波発生 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、磁性と強誘電性を示す数々の磁性強誘電体における巨視的な磁気ドメインの「光による制御」に挑戦し、室温において、フェムト秒レーザーを照射することで、フェリ磁性を示す強誘電体からのテラヘルツ電磁波放射現象の観測に初めて成功した。テラヘルツ帯や赤外・可視域における光学特性やテラヘルツ電磁波放射特性を測定し、テラヘルツ電磁波放射機構が、フェムト秒レーザー励起による高速磁化変調による磁気双極子放射であることを明らかにしたことは大きな成果である。 磁気特性を超高速に制御するためには、磁化などの物理量の平均値を測定することだけでは不十分であり、磁気ドメインを実空間で観察し、ピコ秒から数秒の時間スケールでドメイン構造が外場によって変化するダイナミクスを明らかにすることが重要な課題である。このような現状の中、試料を二次元的に走査しテラヘルツ電磁波振幅の場所依存性を測定したところ、今回、サブピコ秒の時間分解能で、磁化ベクトルが簡便に可視化できることを見出した。すなわち、磁化ベクトルの方向を決定することのできる新たな磁気ドメインイメージング手法を開発した。 さらに、磁性絶縁体においてテラヘルツ電磁波放射現象の探索を行ったところ、強誘電性を示さないフェリ磁性体からも、磁気双極子放射によってテラヘルツ電磁波が発生することを初めて見出した。磁性体からも普遍的にテラヘルツ電磁波が発生することは、予期していなかった発見である。 このように、磁性強誘電体からのテラヘルツ電磁波発生に初めて成功し、それを利用した新しい磁気ドメイン可視化法を開発したことによって、磁気ドメインの光制御に関して、重要な基盤が築けたと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度の目標に掲げていた、磁性強誘電体からのテラヘルツ電磁波放射現象の観測に成功したのみならず、サブピコ秒の時間分解能で、磁化ベクトルの方向を決定することのできる新たな磁気ドメインイメージング手法を開発した。さらに、磁性体からも磁気双極子放射によって、普遍的にテラヘルツ電磁波が発生することを見出した。上記の成果は当初の計画以上のものと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
27年度で見出したテラヘルツ電磁波発生を利用した新しい磁気ドメイン観察手法を使い、外場として、電場や光を利用し磁気ドメインの光制御に関する研究を進める。さらに、他の物質系においてもテラヘルツ電磁波発生現象を探索する。
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Causes of Carryover |
平成27年度に当初計画していた低温実験を行わなかった。そのため使用する予定であった光学素子を購入しなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度に、低温実験を計画しており、当初予定の光学素子を購入する予定である。
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