2015 Fiscal Year Research-status Report
リアルタイムOSによる時間確定型エレクトロマイグレーション制御系と単一原子駆動
Project/Area Number |
15K13333
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
白樫 淳一 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (00315657)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 電子・電気材料 / リアルタイムオペレーティングシステム / エレクトロマイグレーション / ナノギャップ / 原子接点 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、金属細線での通電にて誘起されたエレクトロマイグレーション(EM)現象により、単一原子の移動・操作機構を利用した原子スケール構造制御技法を開発し、原子スケールサイズの構造体(原子接合や原子ギャップ)の作製と、そこから発現される新しい物性の探索・制御と機能の集積化を目的とする。具体的には、リアルタイムオペレーティングシステム(RTOS)を用いて金属ナノ細線でのEM制御システムを独自に構築する。この際、EM原子の移動を時間確定的に「その場」制御し、単一原子スケールでの移動・操作を精緻に調整しながら原子スケールの接点構造やギャップ構造を作製する。同時に、原子スケール構造体から発現される諸物性をナノギャップ電極を利用して電気的にプローブすることで、単一原子機能性の発現・制御手法としての原子デバイス技術の構築を目指す。 初年度(平成27年度)では、フィードバック制御のシステム応答性の観点から、時間確定的な処理が可能なオペレーティングシステムとして知られるRTOSに着目した新たな電圧フィードバックEM制御システムの構築を行った。RTOSを用いた本システムをAu細線に対するEMに適用し、RTOS導入によるエレクトロマイグレーション制御ステップの時間確定性を検討するため、EM制御実行時における計測時間のばらつきを検証した。これより、設定した計測時間間隔で完璧にEMの発現が制御され、その発熱特性が理想的なジュールヒーティングモデルで説明できることが明らかとなった。さらに、原子接合におけるAu原子の増減制御や維持方法を詳細に検討し、単一Au原子を室温・大気下にてEMにより駆動することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題では、リアルタイムオペレーティングシステム(RTOS)を用いて金属細線でのエレクトロマイグレーション制御システムを独自に構築した。この際、エレクトロマイグレーション原子の移動を時間確定的に「その場」制御し、単一原子の移動・操作を精緻に調整しながら、原子スケールの接点構造である「原子接合」や原子スケールのギャップ構造である「原子ギャップ」を作製することが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
第2年度(平成28年度)では、これまでに開発してきたRTOSを用いた電圧フィードバック制御型エレクトロマイグレーション法による時間確定的なエレクトロマイグレーション原子の移動・操作機構を用いて、「原子接合」や「原子ギャップ」の作製技術を確立する。これらの技法を応用することで、ナノメートルのギャップ空間内にアイランド電極が原子1個~数個分のサイズで形成された、究極的な単電子トランジスタと考えられる「”単原子”トランジスタ」の開発を行う。これは、固体素子にて、単原子の電子状態を直接制御できる可能性がある。
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Causes of Carryover |
平成27年度では、本研究の進捗とともに研究成果の着実な蓄積が成されるに従い、高性能な電流電圧印加計測が可能なソースメジャーユニット(SMU)である高感度ソースユニット電流電圧測定システムを整備する必要性が徐々に明らかとなりつつあった。当該SMUの性能は、現在使用している従来機よりも測定分解能が小さく、高速動作が可能である。このSMUの整備計画は、当初の研究計画では想定しておらず、今年度での良好な研究進捗に伴い研究成果の更なる向上が可能と判断できたため、研究計画の部分的な見直しが発生した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度は研究課題の良好な進捗が得られ、想定以上の研究成果を蓄積することが出来た。さらに、最終年度である平成28年度では、昨年度に生じた研究計画の修正部分を補うべく、「原子接合」や「原子ギャップ」の作製にかかる実験プロセスの大幅な効率化に伴い必要とされる新しい高性能ソースメジャーユニット(SMU)を購入するために、当該助成金を使用する予定である。
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