2015 Fiscal Year Research-status Report
完全スピン偏極ゼロギャップ半導体の創製とスピンデバイス応用
Project/Area Number |
15K13335
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
植田 研二 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10393737)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | スピンギャップレス半導体 / ホイスラー合金 / 移動度 / 異常ホール効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は主として、ホイスラー合金型完全スピン偏極ゼロギャップ半導体(スピンギャップレス半導体:SGS)の最有力候補であるMn2CoAl(MCA)高品質薄膜の作製を試みた。MCA薄膜については、イオンビームアシストスパッタ法を用いる事により、格子ミスマッチの比較的良好な(~2%)MgO及びMgAl2O4基板上に、成長温度300-600℃でエピタキシャル成長する事を見出した。また低温(300-400℃)で成長したMCA薄膜は、高温成長で作製したもの(500-600℃)と比較して結晶性等は悪いが、磁気及び電気特性が優れている事が分かった。この理由はMCAは基板と反応性が高く、高温で基板との界面拡散・反応が生ずる事に由来すると思われる。また、高磁場下でのホール効果測定はMCAの様な磁性(強磁性、フェリ磁性等)半導体のキャリア濃度や移動度を決定するのに必須となるが、既有の装置と組合わせて新たな測定系を立ち上げ、7テスラ、2-300Kの高磁場・低温下でのホール測定が実施可能となった。この装置を使用してMCA薄膜のホール測定を行った所、低温(4K)でのキャリア濃度及び移動度が、~7.4×1020 cm-3及び~16 cm2/Vsとなった。移動度は他グループのMCA薄膜の値(<~0.7 cm2/Vs)より~2桁大きかったが、我々の薄膜が他グループよりも品質が高い為だと思われる。これらの内容について近日中に論文投稿予定である。 また、MCA以外でSGS的特性を示す材料として、理論計算でSGSとなると予測されているTi2CoSiについても薄膜化を試みたが、ホイスラー相とするのが難しく安定相で無い可能性が出てきた為、今後の研究は、MCAのデバイス化及び光電子分光法による直接バンド構造観察に注力する事とする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現状、初年度の主目標としていた高品質Mn2CoAl薄膜の作製及び、高磁場低温下で測定可能なホール測定装置の新規立ち上げはほぼ終了しており、順調に研究が進展していると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
MCAを対象として、材料の極性制御、(p型及びn型のMCA作製)及び、両者を組み合わせたpnダイオードの作製を試みる。p-n制御については不純物のドープ(AlサイトにSiドープ等)や基板とのミスマッチを利用したSGSへの格子歪みの印可等によりフェルミ準位をシフトさせ実現する。SGS材料のpnダイオードが作製できれば、そのスピン偏極性と併せて、スピン偏極電流の整流が可能なスピンpnダイオードの作製成功となる。また、スピン分解光電子分光法を用いたMCAのバンド構造の直接観察を行い、MCAがSGSである直接的証拠を得る試みも行う。
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Research Products
(6 results)