2015 Fiscal Year Research-status Report
フレキシブル基板を用いた機能性材料の歪みによる物性制御
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15K13336
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
飯田 和昌 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (90749384)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 動的歪み / ピエゾ / 機能性制御 / 超伝導 / 金属基板 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,可撓性に富んだ金属基板上に機能性材料を成膜し,高いレベルでの歪みを人工的に制御し,機能性の制御を目的としている.本年度は,まず薄膜試料に高いレベルでの歪みを動的に印加できる小型デバイスの作製を行った.このデバイスには3つのピエゾ素子が並列に組み込まれているのが大きな特徴である.デバイスの両端に設置されたピエゾ素子にプラス(伸長歪み)、中間に配置されたピエゾ素子にマイナスのバイアス電圧(圧縮歪み)をかけることで大きな歪みを試料に印加できる.作製した装置の室温での動作確認を行ったところ,ピエゾ素子に110 Vの電圧を印加した時に期待値よりも半分程度の歪み量しか得られなかった.これは歪みゲージ自体が歪み伝達の妨げになるためである.そこで歪みゲージの設置部をチタン板から厚紙に変更したところ,期待値の約90%の歪み量が得られた.次に実際の試料をデバイスに組み込んだ場合を想定して,金属基板をデバイスに組み込んで動作確認を行った.その結果,試料設置前後で約10%の歪み量に差が生じた.このことから試料により歪み量は抑制されるものの,その影響は小さいと結論できる. 次に,金属基板上への薄膜成長について報告する.薄膜材料として逆ペロブスカイト型Mn3CuNを選択した.この系は窒素欠損が生じやすく,窒素量により物性が大きく変化することが報告されている.X線回折実験により,成膜したすべての薄膜はエピタキシャル成長していることがわかった.窒素欠損を抑制するために成膜後,チャンバー内で窒素アニールを施した.その結果,結晶性は劣化するものの窒素欠損の少ないエピタキシャルMn3CuN薄膜を金属基板上に成膜することができた.この薄膜を上述の歪み印加装置に組み込み,抵抗の歪みによる影響を室温にて調べた.その結果,測定試料の抵抗率が小さいため歪みによる抵抗率の系統的な変化は見られなかった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
薄膜試料に高いレベルでの歪みを動的に印加できる小型デバイスの作製を行った.このデバイスにより,金属基板上に成膜された機能性材料の物性の歪み依存性を系統的に調べることが可能となった.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,金属基板上への超伝導薄膜の成長条件最適化に取り組むと同時に,低温での実験が行えるように冷凍機の組み立てを行う.
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