2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K13339
|
Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
横山 新 広島大学, ナノデバイス・バイオ融合科学研究所, 教授 (80144880)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | メモリー機能 / 光導波路 / フォトクロミック材料 / ジアリールエテン / 紫外線誘起光透過率減少 / 可視光照射光透過率回復 / ニューラルネットワーク / シナプス模擬機能 |
Outline of Annual Research Achievements |
フォトクロミック有機材料である、ジアリールエテンを塗布型シリコン酸化膜に混ぜ、シリコン窒化膜光導波路上に被覆し、クラッドとした。この光導波路において、高圧水銀ランプからの紫外線を照射することにより、緑色(波長530nm)の光の透過率がほぼゼロになった。次に緑色光を導波路に通すと、透過率が徐々に増加し、もとの高い透過率に戻った。照射する緑色光のエネルギー総量と光透過率の間には、指数関数的な次の関係のあることが分かった。I=A(1-exp(-E/B)) ここで、Iは透過光の強度、A、Bは定数、Eは照射した緑色光のエネルギー総量である。この特性は、シナプス結合強度が、シナプス部分を通過する信号総量に応じて強くなることに対応できる。また、紫外線照射時間が短い場合は、この紫外線照射による透過率の減少と緑色光照射による透過率の回復は、繰り返し再現するが、紫外線照射時間が20秒を超えて長くなると、緑色光照射による透過率の回復が遅くなることが見いだされた。この現象は紫外線照射により有機材料であるジアリールエテン分子にダメージが誘起され、緑色光照射によるダメージ回復により長時間を要するためと解釈される。紫外線ランプの光のうち、短波長成分をナトリウムガラス、およびアクリル樹脂によってカットし、同様の実験を試みた。その結果、紫外線照射による回復遅延に抑制効果が見られた。しかし、ダメージ効果を完全に抑制するには至っていない。今後は、ダメージ効果の抑制とジアリールエテンをクラッドではなくコア材料に埋め込んで、デバイス長を短くすること、およびこの光メモリ効果と閾値を持つCMOSシリコン発火回路を組み合わせて、ニューラルネットワークを試作し、その基本動作を確認する。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初想定していた材料は、無機の固体電解質であった。しかし、光導波路に用いるためには、波長程度の厚い膜が必要であり、固体電解質では作製が難しいことが判明した。そこで当初想定していた材料とは異なる、有機フォトクロミック材料を用いた。その結果、光メモリー効果が確認でき、シナプス結合の一部の機能を再現することができた。従って、概ね順調に進展していると考える。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、コアにフォトクロミック材料を混ぜることで、デバイスをより微細化することを目指す。 またシリコンCMOS回路による閾値をもつ発火神経模擬細胞回路と組み合わせることにより、光ニューラルネットワークを試作し、その動作実証に挑戦する。
|