2015 Fiscal Year Research-status Report
高効率・高出力を両立するAlInN発光デバイスの実現
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15K13344
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
小島 一信 東北大学, 多元物質科学研究所, 准教授 (30534250)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山崎 芳樹 東北大学, 多元物質科学研究所, 助教 (20730352)
秩父 重英 東北大学, 多元物質科学研究所, 教授 (80266907)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | AlInN / 光物性 / 非極性面 |
Outline of Annual Research Achievements |
H27年度は、主にAlInN薄膜の光物性評価に注力した。
まず、m面AlInN薄膜の基本的な光物性を評価するために、集光スポット径約1mmのカソードルミネセンスによる分光評価を行った。圧縮非歪領域では、InNモル分率を大きくすると、発光波長は単調に長波長化し、InNモル分率0.3程度で、緑領域におけるブロードな発光スペクトルを伴う発光を観測した。また、m面AlInN薄膜の発光は偏光度0.5程度の偏光を持つことがあることも分かり、単純なバンド端発光ではなく、無偏光もしくは偏光度の小さな別種の発光起源とバンド端の混成が生じた結果生じた発光であることが示唆された。
次に、このような特異な発光の起源をさらに追及するために、m面AlInN薄膜の屈折率および吸収係数の分散関係を分光エリプソメトリーによって評価した。その結果、屈折率はInNとAlNの混晶として予測できる範囲の挙動を示したことに対し、吸収係数はバンド端と思われるエネルギー領域において、緩やかではあるが極大構造を持つことが明らかとなった。このような構造は、InNモル分率の大きなInGaN系では見られないことである。また、吸収係数の極大エネルギーと発光スペクトルのピークエネルギーの間には大きなストークスシフトが観測された。このようなシフトは、InGaN系のストークスシフトと比べると、約二倍という巨大なものであり、AlInN系はInGaN系とは異なる物性を持つないしは不均一によるキャリアの局在度合いが著しいことが強く示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
達成度としては、当初予想していた通り、m面AlInN薄膜が極めて特異な光物性を有することを示唆する実験データが得られたことから、予定通りであると言える。
本研究は、m面AlInNにおいて、低温の発光強度と室温のそれとの比が大きい(温度消光しにくい)という実験事実に基づいて、AlInNの輻射が極めて高速であるという仮定の下推進している。本研究以前では、そのような仮定を裏付ける実験事実が存在しなかったが、上記の通り、バンド端とは異なる発光起源が、m面AlInN薄膜の光物性を支配していることを強く示唆するデータが得られた。また、吸収係数のピークが、大きなストークスシフトを伴って観測されたことも、吸収の増強、つまり発光の増強が起きていることを示唆する事実といえる。
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Strategy for Future Research Activity |
H28年度は、まず、これまでの研究で示唆された吸収の増強が発光にも反映されていることを見るために、時間分解分光を行い、発光減衰を実験的に評価する。発光増強を調べるためには、輻射再結合寿命の評価が必要であるが、室温における発光寿命は、ほとんどが非輻射再結合寿命に支配されているものと考えられる。このため、本評価のためには極低温から室温までの温度範囲で発光寿命を評価する。併せて、輻射と非輻射の程度を切り分けるために、室温における絶対輻射量子効率も合わせて評価することで、発光の増強程度を定量的に調べる。比較としては、同じキャリアの局在効果を有するInGaNを参照し、静的・動的光物性を総合的に調べる。
併せて、電子線励起によるm面AlInNの発光デバイス化も推進する。理想的にはpn接合を形成して、電流注入デバイスとして用いたいが、現時点ではAlInNのp型化は困難な見通しである。しかし、電子線励起の場合は大面積化、高注入化が容易であるため、デバイスサイズは若干大きくなるものの、電流注入デバイスにはない利点を持つ、新たな窒化物半導体光デバイスの形として存在感を付与できる可能性があると考えている。
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Causes of Carryover |
本年度は計画していた実験が予想以上に早く進んだ結果、想定していた消耗品費が必ずしも必要でなくなった状況が生じた。そこで、基金の特徴を活かし、次年度へ繰り越すことで、当初計画にない量子効率などの実験などを行うことを決めた。この実験は、AlInNの発光性能を定量的に評価するために極めて効果的であるため、建設的な判断であると考えている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
AlInN薄膜の量子効率測定を行う。また、参照用の試料としてInGaNを用い、特にキャリアの空間的・エネルギー的な局在効果と発光効率や寿命との相関を明らかにする。現状のAlInNの発光は、十分検出可能なればるにあるが、発光が非常にブロードであるため、CCD検出器を用いる場合、チャンネル当たりの光量が低く、標準的な量子効率評価系では性能が不足する可能性がある。このため、新たにAlInN向けの量子効率評価系を構築し、精密な実験を実施する。
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Research Products
(5 results)