2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K13358
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
保原 麗 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 研究員 (30568176)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長谷川 修司 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (00228446)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 純スピン流 / 表面・界面物性 / スピントロニクス / 磁性 / 走査プローブ顕微鏡 |
Outline of Annual Research Achievements |
電荷の流れを伴わない純スピン流の注入、およびスピン圧計測が可能な微小プローブの製作を目指し、研究を行っている。平成27年度は試作プローブの設計・試作を行った。 当初計画では多探針STM装置を用い、強磁性・常磁性探針の接合を用いたスピン注入の検証を行う予定であったが、これは中止とした。スピン注入が起きることは確定しており、それを定量的に検証することでプローブ製作への知見を得る目的であったが、より詳細に検討した結果、探針接触位置の誤差などにより十分な測定精度が得られないことが判明した。検証を行ってもプローブ製作そのものへの貢献が小さいために取りやめることとした。 一方プローブ本体の制作に関しては当初計画を前倒しし、27年度中に試作プローブの設計・制作を完了した。プローブ本体は微小であるため、微細加工技術が必要である。東京大学大規模集積システム設計教育研究センター(VDEC)の所有するクリーンルームにおいて、同センターの保有する微細加工装置をもちいて製作することとした。当初は製作を依頼する予定であったが、高度な加工が必要であるためすべて自分たちで製作することとした。 スピン注入には、手軽さと定量性の観点から、強磁性体と常磁性体の界面を用いた電流にるスピン圧誘起の仕組みを利用する。技術的に困難であるのはプローブの接触点からスピン緩和長未満の距離に強磁性体と常磁性体の界面を生成することである。これを実現するために様々な方式を検討し比較をおこなったが、いくつかのアイデアと先端的な微細加工装置によって解決されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
プローブ本体の制作に関しては当初計画を前倒しし、27年度中に試作プローブの設計・制作を完了した。一方で、多探針STM装置を用いたスピン注入の検証を中止したため、当初の予定に含まれていた常磁性・強磁性界面でのスピン流注入の量の検証、測定回路の制作はまだ行っていない。スピン注入におけるインピーダンスミスマッチへの対応などを考慮すると、全体としてはおおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
プローブの試作は完了したので、今後はその検証を行う。検証に当たってはスピン注入を制御する制御回路、およびスピン注入を検証するための微細加工パターンの製作が必要となる。微細加工パターンはプローブの製作と同様にVDECの設備を借りて製作する。 スピン注入の実証後はスピン圧測定の実証、注入・計測の定量性、とくに注入の効率を調査する予定である。インピーダンスミスマッチにより試料によってスピン注入の効率が変わるはずであるが、多探針STMを用いた検証ができなかったため、実際の効率はあまり知見がない。これについて重点的に計測していく予定である。 注入効率やプローブの安定性などの検証を行い、場合によってはプローブの試作を繰り返す必要があると考えている。
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Causes of Carryover |
設計・製作を行う東京大学大規模集積システム設計教育研究センターで装置トラブルが発生し、製作できなかったため、予定していた利用料が発生しなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
装置トラブルが復旧次第、製作を再開するのでその利用料として使用する。
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