2015 Fiscal Year Research-status Report
自己先鋭化プローブによる高分解能原子間力顕微鏡の実現
Project/Area Number |
15K13364
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
阿保 智 大阪大学, 基礎工学研究科, 助教 (60379310)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 走査プローブ顕微鏡 / 原子間力顕微鏡 / 電界エッチング / 電子ビーム誘起堆積 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、超高分解能原子間力顕微鏡(AFM:atomic force microscope)の分解能と計測感度向上のため、AFMプローブ先端に電界誘起酸素エッチングもしくは電子ビーム誘起堆積を施し、曲率半径10nm以下を実現する自己先鋭化プロセスの開発を行う。電界誘起酸素エッチング、電子ビーム誘起堆積いずれのプロセスでもAFMプローブ自身の形状の電界集中により、プローブ先端部分で選択的に加工が起こるため、非常に簡単なプロセスで先鋭化が可能である。 平成27年度には、まず、水酸化カリウム水溶液による電解研磨により直径0.3mmのタングステンワイヤを先端曲率半径数十nmまで高い再現性で先鋭化する条件を見いだした。この条件は、平成27年度に行った電界誘起酸素エッチング、平成28年度に予定している有機金属ガスを用いた電子ビーム誘起堆積いずれでも必須な本研究課題の基礎技術である。 次に、10の-3乗Pa程度の酸素雰囲気中で電界誘起酸素エッチングにより、電解研磨により先鋭化したタングステンワイヤの更なる先鋭化を試みた。タングステンワイヤ先端に印加した高電界と酸素分子により先端がエッチングされることは観察されたが、曲率半径数ナノメートルの先端を得ることは出来なかった。電界誘起酸素エッチングによる先鋭化プロセスでは、タングステンワイヤ先端とシャンク部分の電界強度の違いを利用して、シャンク部分のみに酸素分子を吸着させ、選択的にエッチングを行う。しかし、本研究で使用した現有の10kVの高電圧電源では、先端近傍の電界強度が足りず、タングステンワイヤ全体に酸素分子が吸着したことで、先端を残した選択的エッチングを行うことが出来なかったと考えられる。平成28年6月末までに、30kVまで印加可能な高電圧源を用いてタングステンワイヤ先端のみを残し、曲率半径数nmを実現するプロセス条件を明らかにする。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、「1,水酸化カリウム水溶液による電解研磨により直径0.3mmのタングステンワイヤを先端曲率半径数十nmまでの先鋭化」「2(a),電界誘起酸素エッチングによる先端曲率半径数nmまでの先鋭化」「2(b),電子ビーム誘起堆積により曲率半径数nmの微小構造の作製」により実現する。平成27年度には、1を完了し、2(a)の実験系の構築と実際の電界誘起酸素エッチングを行った。しかし、曲率半径数nmのAFMプローブ実現には至らなかった。これは、現有の10kVの高電圧電源では、先端近傍の電界強度が足り無かったためと考えられるため、平成28年6月末までに、30kVまで印加可能な高電圧源を用いてタングステンワイヤ先端のみを残し、先端曲率半径数nmを実現するプロセス条件を明らかにする。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成27年度までの電界誘起酸素エッチングプロセスでは、タングステンワイヤ先端の電界強度が足りず、本来残すべきワイヤ先端までエッチングされた。そこで、平成28年6月末までに10kV以上の高電圧を用いて電界誘起酸素エッチングプロセスによる先鋭化プロセスの開発を完了する。 平行して、電子ビーム誘起堆積による自己先鋭化プロセスの開発のため、プローブ加工真空チャンバーに「有機金属ガスを導入可能な系の設計及び導入」と「ゲート付き冷陰極とプローブ用のタングステンワイヤの位置合わせ可能なホルダの設計及び導入」を行った後に、曲率半径数nmを実現する電子ビーム誘起堆積条件を明らかにする。
|