2015 Fiscal Year Research-status Report
モード多重光通信のためのベクトルビーム制御技術の研究
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15K13370
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
大寺 康夫 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (20292295)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | OAM / ディスク光共振器 / 導波モード共鳴 / 共振モード解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は近年光ファイバ通信システムにおける多重化の新たな方法として注目されている「モード多重化」または「空間多重化」に関するもので、OAM(Orbital Angular Momentum)と呼ばれる光の軌道角運動量を持つビームを入出力することのできる光集積回路を創生することを目的としている。具体的には石英等の低屈折率基板上に形成した窒化シリコン(SiN)の高屈折率膜に、側壁グレーティング付きディスク共振器を形成する。この共振器の光閉じ込め及び回折機構によって、特定のOAMを持つモードを共振させ、その光パワーの一部を鉛直方向に取り出す(または鉛直方向から到来するOAMビームで共振モードを励振し、光集積回路内に導波光として取り出す)ことを狙っている。 H27年度は主に3つの事項を実施した。 (1)鉛直方向から到来するビームと共振モードとの結合効率の自在な制御に向けた共振器設計技術。側壁上のグレーティングとともに、ディスク内部にも周期的に空孔列を形成するが、両者の配置角度関係を適切に調整することで、面内の光閉じ込め(面内Q値)をほぼ維持したまま、鉛直方向のみの結合効率を大きな幅で変化させうることを数値シミュレーションを通して見出した。 (2)ディスク状デバイス中の固有OAMモードの計算手法の確立。BOR(回転体)/2D-ハイブリッドFDTD法を用いて、個々のOAMを持つ共振モードを求めるための、モードソルバ・シミュレーションの手法を確立した。このシミュレーション手法を駆使して、研究開始当初は未知だったディスク共振器の共振モードの全体像を明らかにした。 (3)デバイスの試作実験。ナノテクノロジープラットフォームの実施機関である産業技術総合研究所の装置を利用して、デバイスの試作実験を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
・「ディスク状デバイス中の固有OAMモードの計算手法」を確立し、それのシミュレータを用いて、(ア)研究開始当初は未知だったディスク共振器の共振モードの全体像を明らかにした。従来型の単純なディスク共振器の共振条件は古くから知られていたが、側壁グレーティングによる導波モード共鳴反射現象が加わることで共振曲線の振る舞いが複雑になる。いかなる構造パラメータでQ値が高くなるのかは、研究開始当初は不明であった。また共振の偏波モードによる違いも明らかではなかった。この解析を通じて、元々の(側壁グレーティングのない)共振器の導波モード群が、側壁の付与によりどのように変化するのかが明らかになり、見通しの良いデバイス設計に役立つ知見が得られた。(イ)面外結合効率の調整方法を発見した。すなわち光集積回路の面内では強い光閉じ込めを維持しつつ、面外方向との(あるいは面外から到来するOAMビームの)結合効率のみを高い自由度で設計できることが、実際の応用デバイスの作製では重要となると考えられた。ここでは確立したシミュレーション手法を用いて様々な構造パラメータの共振器のモードを解析することで、グレーティングをどうすれば面外結合効率を制御できるのかが明らかになった。このようにシミュレーションと理論の観点では重要な進捗が得られている。 ・次に試作を計画より前倒しして開始した。まず本学所有のEB描画装置を用いて代表的なディスク共振器パターンを描画し、その後ナノテクノロジープラットフォームの実施機関であるつくば・産業技術総合研究所で技術代行の形でデバイス加工を実施した。本学の設備では困難を極めていたSiN膜のドライエッチ加工ができることが判明し、プロセス条件がほぼ確立した。このように試作実験の観点でも大きな進捗があった。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)解析・シミュレーションの観点からの検討:これまで上記に述べた電磁界シミュレーションは、すべて構造を2次元で近似して行ったものであった。今回の開発対象は石英/SiNという高屈折率差材料系であるので、精度のよい解析のためには3次元の電磁界シミュレータが必要になる。今後は開発したシミュレータの3次元化を行い、より正確にディスク共振器の物理的な振る舞いを把握することに役立てたい。また面内Q値や面外結合効率、放射ビームの偏光分布などを正確に見積もることにも利用したい。 なお3次元では大規模な計算空間が必要となることから、通常のCPUベースのシミュレーションでは解析時間が長大になる。これを回避するために、GPGPUやFPGA等を用いた並列計算の利用も検討する。 (2)試作実験の継続:H27年度は試作まで行ったものの、プロセス前半のEB描画の段階で描画装置のソフトウェアの不具合により、集積回路パターンが正確に描画できなかった。H27年度後半にこの不具合が解消された模様なので、再度描画実験および産業技術総合研究所の装置による加工実験を実施し、デバイスを試作したいと考えている。また試作したデバイスの光学特性の評価や放射光の観察も実施したい。
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Research Products
(4 results)