2015 Fiscal Year Research-status Report
アト秒光電子分光のための超高強度テラヘルツパルス発生
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15K13375
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
板谷 治郎 東京大学, 物性研究所, 准教授 (50321724)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 応用光学・量子光光学 / 量子エレクトロニクス / 高性能レーザー / 光物性 / テラヘルツ/赤外材料・素子、天然ガス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、高強度超短パルスレーザーを用いて、アト秒分光において利用可能な高強度テラヘルツパルスを発生させることである。平成27年度には繰り返し1kHzのチャープパルス増幅チタンサファイアレーザーによって励起される赤外光パラメトリック増幅器において、位相同期した二波長光を増幅し、その差周波発生によってキャリアエンベロープ位相が受動的に安定化した中赤外パルス発生手法の実証実験を行った。本手法は、赤外域の二波長成分を空間的に分離することなく、同軸配置で増幅するため、相対位相が受動的に安定していることが期待出来る。中赤外パルスの波形計測のために、希ガス充填中空ファイバーによる自己位相変調とチャープミラーによる分散補償を行い、可視域で6.5フェムト秒の極短パルスを得た。可視6.5フェムト秒パルスと薄膜LGS結晶を用いた電気光学サンプリングによって、中赤外パルスの電場波形の直接測定が可能となった。測定された中赤外パルスは、エネルギー5マイクロジュール、パルス幅70fs, 中心波長8マイクロメートルであり、集光点のスポット径は32ミクロンと見積もられた。これらの結果から、集光点での最大電場は56 MV/cmが達成されたと結論された。この結果は、当初目的としていた10 MV/cmを大きく上回るものである。また、中赤外パルス波形の長時間測定を行い、数時間の測定では電気光学サンプリングのプローブパルス(可視6.5フェムト秒)と中赤外パルスとのタイミングのドリフトに起因するとみられる電場波形のシフトが観測された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初は低繰り返し・高エネルギーのチャープパルス増幅チタンサファイアレーザーで高強度のテラヘルツ発生を行う目論見だったが、赤外域光の差周波をとることによって、高安定かつアト秒分光と整合性の高い中赤外パルス(~40 THz)の光を得ることが出来た。また、サブサイクル精度での電気光学サンプリングが可能となったため、光電場で強く駆動された固体中の電子の極端非線形光学応答を直接観測する手法への展開が期待出来る。
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Strategy for Future Research Activity |
ることが出来た。また、サブサイクル精度での電気光学サンプリングが可能となったため、光電場で強く駆動された固体中の電子の極端非線形光学応答を、光電場の一周期以下の超高速プローブで観測する新しい分光手法(サブサイクル分光)の確立を目指す。そのために、分光手法としての高度化を進め、固体中での高次高調波発生や、バンド内のサブサイクル吸収分光などを行い、光で駆動された物質相に関する詳細な知見を得る。
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