超高速偏光スイッチングを可能にするマイクロ波アンジュレータの開発

2015 Fiscal Year Research-status Report

• Project/Area Number: 15K13401
• Research Institution: Tohoku University
• Principal Investigator: 柏木 茂 東北大学, 電子光理学研究センター, 准教授 (60329133)
• Project Period (FY): 2015-04-01 – 2018-03-31
• Keywords: アンジュレータ / 偏光 / 電子ビーム

Outline of Annual Research Achievements

本研究では超高速偏光スイッチングを可能にするマイクロ波アンジュレータの開発を目指しているが、その主コンポーネントである長軸Febry-Perot共振器構造をした特殊な高周波空洞の設計、試作の基礎データになる電磁場解析および電子ビームの空洞内の電磁場相互作用について考察を行なった。
平成27年度は最も単純なマイクロ波アンジュレータの構造である矩形導波管に定在波を励振させるタイプのマイクロ波アンジュレータについて電磁場解析コードを用いてシミュレーションを行なった。共振周波数は2856MHz、励振モードはTE01モードとし、空洞断面形状や結合空洞、ビームダクト形状に関する考察を行なった。概ね、定在波空洞および結合空洞の設計は完了でき、進行波型の高周波空洞に現在は取り掛かっている。進行波型については矩形空洞をベースに設計を始めた。また本研究では、高周波空洞内に水平方向と垂直方向にビームを蛇行させる2つのモードを励振・伝播させる必要があるが、この2つのモードの分離・独立性をどのように確保するか検討を開始した。
また、マイクロ波アンジュレータ内の電磁場と電子ビームの相互作用についても、電磁場コードにより求めた電磁場中を相対論的エネルギーの単一電子がどのような軌道で運動するかを3次ルンゲクッタ法により調べた。また、その際に単一電子が作り出す光の電場の時間分布やスペクトル分布についても考察を行なった。
一方、実験的にマイクロ波の位相を高速にスイッチングするIQ変調器を用いた移送器のテストなども実施した。

Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

平成27年度は①マイクロ波アンジュレータ内の電磁場と電子ビームの相互作用について、②マイクロ波アンジュレータの高周波空洞製作準備を計画していた。①については、単一電子についてではあるが、単純構造のマイクロ波アンジュレータ内での電子軌道などについて数値計算を行なうことができた。②のマイクロ波アンジュレータ空洞製作の準備についても、最も単純な定在波型のマイクロ波アンジュレータの電磁場計算からスタートし、高周波空洞の設計を進めている。

Strategy for Future Research Activity

本研究で開発を目指すマイクロ波アンジュレータは、電子を水平・垂直方向に振動させる2つの異なるモードの電磁場を高周波空洞内に励振させる必要がある。平成28年度は、この2つのモードの電磁場をどのように高周波空洞内に励振させるか、電磁場計算コードを使いシミュレーションスタディを進める。また一方、実験的にマイクロ波の位相を高速かつ安定にスイッチングする高周波システムの開発を進めていく予定である。

Causes of Carryover

今年度、電磁場計算を行うためにメモリーを多く搭載したデスクトップPCを使用することを当初計画していたが、システム・ソフトのインストールなどの手間を省くために現在所有しているデスクトップPCにメモリーを造成したため、若干当初の計画よりも使用額を減らすことができたため。
また、高速位相スイッチングを実現するためのIQ変調器の選定が完了しなかったため、次年度使用額が生じた。

Expenditure Plan for Carryover Budget

次年度使用額については、高速位相スイッチングを実現できるIQ変調器の購入に使用する予定である。また、平成28年度はマイクロ波アンジュレータの高周波空洞設計を完了し、コールドモデル製作の準備・試作をおこなう予定であるが、そのために計画している予算は十分でなく次年度使用額分をコールドモデル空洞製作の準備・試作の補助に使用する可能性もある。

Research Products

• [Presentation] 極短電子ビームを用いたコヒーレントアンジュレータ放射光発生に関する研究 (2016)
  • Author(s): 柏木茂, 日出富士雄, 武藤俊哉, 南部健一, 齊藤寛峻, 阿部太郎, 高橋健, 長澤育郎, 東谷千比呂, 柴崎義信, 濱広幸
  • Organizer: 日本物理学会 第71回年次大会
  • Place of Presentation: 東北学院大学泉キャンパス（宮城県仙台市）
  • Year and Date: 2016-03-22