2015 Fiscal Year Research-status Report
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15K13404
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
桑原 真人 名古屋大学, 未来材料・システム研究所, 准教授 (50377933)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 信夫 名古屋大学, 未来材料・システム研究所, 特任教授 (40126876)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | スピン / 強度干渉 / 量子効果 / コインシデンス |
Outline of Annual Research Achievements |
電子線はそのフェルミ統計により強度干渉においてアンチバンチングを起こす。しかしながら、フェルミ統計由来のアンチバンチングであるのか空間電荷効果によるものなのか明確な分離測定手法がない。一方、我々はスピン偏極透過電子顕微鏡の開発の成功により、高い偏極度、高い空間干渉性を持った電子線生成を実現し、バイプリズムによる一次相関測定に成功した。そこで、本研究ではこのコヒーレント偏極電子線を用いて強度相関測定を実施し、スピン偏極電子/無偏極電子の切り替えによるアンチバンチングの変化を測定する。スピン偏極度を操作することによりアンチバンチングの物理を明確にし、電子による強度干渉実験の実証を目指す。 平成27年度は、以下の3項目について進めた。 ①検出器の設計・作成:スピン偏極透過電子顕微鏡の観察室および試料室に挿入可能な検出器の設計を完了した。電子線入射方向に垂直な面内で微調整機構を加えたもので100μm以下の精度でビーム中心に設置可能となる。一方、電子線バイプリズム装置に逆バイアスを印可し、干渉性を保ったまま電子線を2つに分裂させ、検出器にそれぞれ照射できるサイズすることに成功した。 ②コインシデンス測定のための回路作成:パルスジェネレータからの信号を疑似信号としてコインシデンスアナライザへ入力後、TAC回路を介して波高分析器(PHA)へ入力する回路の作成に成功した。出力信号から10ps以下の時間分解能が達成できることを確認した。 ③同時計数測定の確認とバンチング測定デモ実験:前置増幅器へ同時に微少パルス信号を入力し、一方にのみディレイラインを食らえることでTACからのシグナルがPHA上でバンチングしていることを確認した。またコインシデンス回路のタイムウィンドウに連動した計測可能時間、入力パルス周期に同期した信号検出を確認し、S/Nの向上が可能な回路作成に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画通り、検出器の開発および高速検出回路の作成に成功している。また、それぞれの性能は目標とする値を上回っており、次年度計画の実験に遂行するに過不足無い状況であるため。
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Strategy for Future Research Activity |
これらを統合したシステムとしての性能を確認することで、インターフェイスにおける問題が無いか確認を行うことで、その後の精密実験に誤差を極力与えない工夫を加える。 次に、検出器を当該電子顕微鏡にインストールし計測実験を進める。同時計数測定を実施するが、検出器同士のクロストークを抑えるため、コヒーレンスの無い電子波を用いて電子検出部分の性能評価を事前に行う。この後、同時計数測定によりアンチバンチング現象の検出に挑む。ここで電子生成に用いるレーザーを時間変調することで電子線の時間構造を変え、ノイズ成分の除去を実施する。 次に、空間電荷効果によるアンチバンチング効果なのか量子効果によるものなのか検証すべく、スピン偏極度を変化させアンチバンチング深さのスピン偏極度依存性を測定する。これによりフェルミ統計に従う効果であるかを検証する。
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Causes of Carryover |
平成27年度では、検出器の設計を終了しており、実際の検出装置については平成28年度に購入を予定している。しかし、検出器の価格が当初よりも高額となったことから、平成27年度予算を無理し使用せず次年度へ繰り越し、無理な設計変更を科すことで生じる性能劣化を抑止し、本研究の遂行を効果的に進め且つ予算を効果的に活用するに方針をとったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度に詳細設計を行った新型検出器を導入し、既に作成に成功した同時検出用電子回路と組み合わせることで、強度干渉実験を実施する。
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