2016 Fiscal Year Research-status Report
細孔構造ゼオライトへのインジウム注入技術開発と超高効率新規反応触媒実現への応用
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15K13406
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
吉村 智 大阪大学, 工学研究科, 准教授 (40294029)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木内 正人 国立研究開発法人産業技術総合研究所, その他部局等, 研究員 (50356862) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ゼオライト / インジウム / 触媒 / イオンビーム / プラズマ |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、インジウムとケイ素の相互作用によって発現する触媒が発見された。そこで我々は、ケイ素を含有するゼオライトにインジウムを注入することによりインジウムとケイ素の相互作用を引き起こし、触媒作用を発現させる研究に取り組んでいる。ゼオライトは細孔構造を持ち内部比表面積が極めて大きいため、インジウムを担持したゼオライトにおいて触媒能を発現させることができれば、触媒効率の向上などが期待できる。 昨年度までは、(1)インジウムイオンビーム照射によるゼオライトへのインジウム注入、(2)アークプラズマ装置によるゼオライトナノ粒子照射によるゼオライトへのインジウム注入、の2つの方法を並行して試みていた。しかしながら、(1)の方法では、ゼオライトを固体ターゲットに整形して、そこにインジウムイオンビームを照射するという手順を踏んでいるため、一度の実験で作成できるサンプルの量がごくわずかであるという大きな欠点があった。一方、(2)の方法では、粉体のゼオライトをそのままの状態で用いている。そのため、一度の実験でも十分な量のサンプルを作成できた。そこで、本年度は、(2)の方法に限定して研究を行った。 本年度は、インジウムの照射量を制御し、ゼオライトへのインジウム注入量が異なる7つのサンプルを作成し、これらのサンプルの触媒活性を調査した。これら7つのサンプル中のインジウム量は、質量比で0.009, 0.03, 0.09, 0.2, 0.3, 0.5, 0.9wt%とした。分析の結果、0.5wt%のインジウムが担持されたゼオライトサンプルがもっとも触媒活性が優れており、Friedel Crafts alkylation反応が80%進行することが分かった。その他のサンプルでは、化学反応の進行率が0.5wt%のサンプルよりもやや劣ることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定では、初年度(昨年度)に、「インジウム注入手法の確立」と「サンプルの表面分析」を行い、二年次(本年度)には、様々な反応に対する触媒効果を分析する予定であった。実際には、研究は予想よりも少し早く進み、早くも初年度に、アークプラズマ法により作製したサンプルが(1)ベンジリッククロリドとアニソールとのフリーデルクラフツアルキル化、の触媒として機能することを確認できていた。本年度は、この触媒活性のサンプル中のインジウム量への依存性を詳細に調べることができた。また、(1)の反応に加えて、他の化学反応に対する効果も検証した。(2)ベンジリッククロリドとキシレンとのフリーデルクラフツアルキル化、及び、(3)ベンジリックアルコールとアニソールとのフリーデルクラフツアルキル化、に関してこれらのサンプルを調査したが、残念ながら、今回作成したサンプルは、これら2つの反応((2)と(3))に関しては、触媒活性を保持していなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度は、実験結果の取りまとめを行う。また、データ不足箇所の補充など、必要に応じて追試を行う。研究計画の変更の予定はなく、また、研究を遂行する上での課題などは、今のところ存在しない。
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Causes of Carryover |
昨年度に行った実験成果を英文論文として発表するため、学術雑誌に投稿を行なったが、昨年度終わりまでにはアクセプトに至らなかった。この論文はオープンアクセスで発表する予定である。オープンアクセスに要する費用は雑誌によって異なるが、我々が現在投稿している学術雑誌ではアクセプト後に1500ドル(17万円弱)を支払う必要がある。昨年度中にアクセプトにいたっておれば、本経費をこれに充てる予定であったが、上述のように3月末までにはアクセプトに至らなかったため、20万円弱の予算を次年度に繰り越すことになった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上述の通り、論文の掲載費(オープンアクセス経費)に使用する。
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