2015 Fiscal Year Research-status Report
有機デバイス開発のための低照射線量逆光電子分光法の研究
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15K13414
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
小川 博嗣 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 分析計測標準研究部門, 主任研究員 (60356699)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
清 紀弘 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 分析計測標準研究部門, 主任研究員 (20357312)
加藤 英俊 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 分析計測標準研究部門, 研究員 (60583747)
池浦 広美 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 分析計測標準研究部門, 主任研究員 (90357319)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 逆光電子分光 / 低速電子ビーム |
Outline of Annual Research Achievements |
逆光電子分光法(IPES)は、有機デバイスの動作において重要な因子である空準位の情報を精密に測定できる唯一の手法である。しかし、IPESは感度が非常に低いため、測定試料に大量の電子線を照射する必要があり、有機材料試料のチャージアップや損傷の問題が起きやすく測定上の大きな課題となっている。この問題を解決するため、本研究では、電子線照射用の電子光学系と逆光電子過程により放出される光子の集光光学系をコンパクトに集約したレンズシステムを開発し、IPESの高感度化を実現する。これにより測定の信頼性と効率を大幅に向上させた実用的なIPES装置の開発を目的としている。 本研究の初年度であるH27年度は、逆光電子分光(IPES)装置の構成要素である低速電子源、低速電子輸送系、測定試料への電子照射レンズ系をSIMIONコード等による電子軌道計算に基づき設計を行った。i) 低速電子銃は熱カソード型をベースに設計し、低エネルギーでも十分な電流が得られる静電レンズの電極数および形状の最適な構造をシミュレーションにより決定した。なお、当該設計においては、低速電子ビームが電流の増加とともに受ける空間電荷効果によるエミッタンス増大の影響も考慮して行った。ii) 試料から放出された光子の検出では、試料への電子照射レンズ系との干渉を最小限に抑え、高いNA(開口数)で光子を検出できるシステムの最適化を行った。これらの結果をもとに高感度なIPES装置の設計を行うことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本提案の主眼であるIPES装置の高感度化において低エネルギー電子光学系と試料から放出された光子の検出系(集光レンズ)との干渉が最大の問題となっていた。具体的には、集光レンズのNA(開口数)を増大させるためにレンズを測定試料に最大限近づける必要があるが、低速電子光学系との干渉を防ぎつつ、低速電子ビーム(E<4eV)を十分な電流量で試料に収束して照射するシステムの実現性に課題があった。この課題に対して新規の光学系を考案し、SIMIONコード等による電子軌道計算によりIPES装置の設計が行えることを示すことができた。本設計に基づき次年度にIPES装置の製作を行い、IPES装置の高感度化の実証を行う。
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Strategy for Future Research Activity |
IPES装置を構築し稼働させ、電子ビーム調整を行う。i) 低速電子銃からの電子放出を確認し、ビーム特性を評価する。ii)電子ビーム輸送系の出射部まで電子ビームを通過させる高電圧等の設定条件を決定する。iii) 電子照射部を接続し、測定試料まで電子ビームを輸送できることを確認し、試料電流が最大になるパラメータを決定する。iv) 光検出器系およびデータ収集・制御系を構築した後、IPESスペクトルを取得する。 IPES装置のエネルギー分解能の評価を行い、従来の装置と同等の分解能が得られることを確認するとともに、IPES装置の感度が従来と比較して向上し、電子線照射量を低減できるか検証する。
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Causes of Carryover |
IPES装置の高感度化を検討するにあたり、新規光学系を考案するのに時間を要し、H27年度は装置設計に注力することとなった。そのため、本年度に予定していたIPES装置の製作に係る費用を次年度に繰り越すこととなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
H27年度の設計に基づき、次年度にIPES装置の製作を実施する。次年度前期に当該製作費として使用する。
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