2016 Fiscal Year Research-status Report
球面螺旋座標を用いた全球大気シミュレーションコードの開発
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15K13417
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
榎本 剛 京都大学, 防災研究所, 准教授 (10358765)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 内挿 / セミラグランジュ移流 / 単調性 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度までの研究で高速球面調和函変換はアルゴリズムが複雑で,計算不安定を生じる部分があることが判明したため,平成28年度は球面螺旋格子の特性を生かした内挿アルゴリズムを開発した。球面螺旋座標は極から極までが1本の螺旋で結ばれており,その上に格子点が1次元的に配置されている。球面螺旋に沿う内挿は,螺旋上の隣接する格子点を複数選べば可能であることは自明である。螺旋上にない任意の点での内挿は,子午線上で行うこととした。まず,値を求める点の経度を通過する子午線と交差する螺旋の緯度を複数決定する。交差する点は,子午線上で値を求める点を挟むように選ぶ。交差する点は螺旋上にあるので,その値は上述の螺旋に沿う内挿を行なって求めることができる。さらに,これらを子午線上で内挿することにより,求める点での値が決定できる。極付近では,極点や子午円に沿って極の向こう側で螺旋と交差する点を用いる。 このアルゴリズムを用いて,球面上の2次元セミ・ラグランジュ移流モデルを構築した。内挿には,螺旋上,子午線上の双方に対して単調性を保証する1次元3次アルゴリズムを適用した。上流点探索は,流れが球面上に拘束されるという条件で反復解法を適用した。極を超えるガウス型の山を移流するテストを行なったところ,3次内挿を用いた既存の手法と同程度の精度が得られることが分かった。なお,時間刻み幅にクーラン数1を超える値を適用しても,安定的に時間積分が可能である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度に行った高階高次ルジャンドル陪函数の計算手法に関する研究発表や掲載された論文に対し,モデルの高解像度化を検討している複数の現業数値予報機関の担当者から問い合わせを受けた。日本地球惑星科学連合2016年大会では,測地学のセッションでポスター発表を行い,球面でのデータを扱う他分野の研究者と議論することができ,本課題で実施した研究成果の意義を実感することができた。申請時に構想した手法とは異なるが,2次元セミ・ラグランジュ移流モデルが完成した。既存手法に匹敵する精度を持ち,単調性を保ちながら安定して動作するモデルを簡潔なアルゴリズムを用いて構築できたことは一定の成果であると考える。このことから,全体としてはおおむね順調であると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
2次元移流モデルについては,様々な条件でのテストを実施するとともに,一層精度を向上させる方法がないか検討する。併せて,浅水波方程式系を用いたモデルへの拡張を試みる。球面螺旋格子の一様性に関する調査や2次元移流モデルに関するこれまでの研究成果を論文にまとめるとともに,本課題で開発した新しいモデルを生かした次の研究計画を構想する。
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Causes of Carryover |
予定していた論文投稿料の支出を行わなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
論文投稿料として支出予定である。
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