2016 Fiscal Year Research-status Report
j -関数の新たな拡張による,虚数乗法とその実二次体版,ムーンシャイン三幅対の夢
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15K13428
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
金子 昌信 九州大学, 数理学研究院, 教授 (70202017)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | j-関数 / 実二次体 / 虚数乗法 / ムーンシャイン / トンプソン級数 |
Outline of Annual Research Achievements |
永友,境と共同で,Kaneko-Zagier 微分方程式の一般化であるような,ある型の 3 階のモジュラー微分方程式の解について調べた.特に,無限遠点での特性方程式が重根を持つ場合の,モジュラーおよび準モジュラー解を記述し,また「指標型」,つまり VOAの指標として現れ得るような型の解を分類した.一般超幾何級数との関連も見いだした.これらの結果は既に論文としてまとめ,投稿中である.有家,永友,境との共著論文では,ある種の微分方程式を満たすモジュラー形式の分類を通じて,ある型のアフィンVOAの分類に応用が出来ることを示した.VOAとj関数はムーンシャイン現象の発見以来近い関係にあり,得られた結果が本研究の構想に使えるかは依然として興味のあるところであるが,残念ながら直接的な関係を見いだすには至っていない. また,実二次体自身の研究として以前より進めてきた caliberの研究においては,広義,狭義ともに,その偶奇を完全に決定するという仕事をまとめた論文がようやく出版の運びとなった.実二次体の整環の caliber については,これまでの研究で,類数とともに興味のある量であることを明らかにしてきており,引き続きその様々な性質,特に類数や単数規準などとの関係について調べていく.また,類数の合同に現れるベルヌーイ数の研究と関連して,その多重化である多重ベルヌーイ数の「双対公式」の一般化を櫻井,津村と共同で見いだした.成果は論文としてまとめ,掲載が決定している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2016年4月にマックスプランク研究所(ドイツ)の Don Zagier教授を招聘し,本研究の構想について議論した.特に j 関数の実二次点での値について得られている以前の研究結果をどこまで進展させられるかについて,また,永友らと行っているVOAに関連する,微分方程式を満たすモジュラー形式の研究について議論した.しかしながら,虚数乗法の実二次体版や,j-関数の真の良い拡張を得たいという当初目標に少しでも迫れるようなアイデアを得るには至らなかった.一つの候補として考え出された,テータ関数を用いる2変数j関数の定義が標準的なものとは言えないようなので,様々なバリエーションを考え,その性質を細かに見ていく必要がありそうである.さらには,SL(2,R)への拡張という大きな目標についても,まだ実質的な進展が得られていない.Maninの実乗法プログラムを,Ghysのような力学系的な視点から見直すのがよいかと考えている. 実二次体のcaliberの研究は一段落したとは言え,その後まだまだ手のつきそうなことを進めることが出来なかった.たとえば4を法とする場合の結果の拡張や,様々な合同式の発見的探索を計算機を援用して行う,といったことがさしあたっての課題である. 11月にモックモジュラー形式の研究集会を開催して,本研究構想とモックモジュラー形式との関連を色々と議論し探った.本年度は目に見えた成果を得るまでには至らなかったが,この方面の研究は有望と思える.
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き他大学の種々の分野の研究者との交流を持ち,また各地の研究集会(特に京大数理研, 代数学シンポジウム,福岡,仙台,広島,早稲田での数論の集会)に参加または主催し,研究連絡や情報の交換,議論 を行う. Zagier教授とは引き続き,招聘または渡航により, 直接会って議論をする. またアメリカの Duke 教授 およびスイスの Imamoglu 教授と5月にドイツで会う予定で,j-関数の実二次点での「値」に関する彼らの以前の結果 (これは 「値」そのものではなく,そのある種の「平均」を考え,それを係数とする母関数を作るとそれが重さ半整数のモックモジュラー形式になる,というもので, さらには,モックモジュラー形式に付随する “shadow” と呼ばれる別の(真の)モジュラー形式が, 私が以前発見したjの係数公式で重要な役割を果たした, j -関数の虚二次点での値の平均の母関数になっているという驚くべきものである)について詳細に議論をし,そこから数論的な何かが取り出せないかを探る. 大学院生松坂が,私のj-関数の係数公式をレベル付きの場合に一般化しており,これに関連してレベル付きのモジュラー関数の研究を研究室の面々が色々と行っている.これらを手がかりにして,本研究構想を進展させていくつもりである.またVOAの第一人者宮本雅彦が九大での集中講義を予定しており,彼との議論によってVOA方面の理解を深め,これまでの永友らとの研究からの寄与をより実質的なものにする.
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Causes of Carryover |
関連文献購入費用が当初見積もりよりも少なく済んだため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の文献購入費用に組み入れ、順次使用を進める。
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Research Products
(8 results)
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[Presentation] 多重ゼータ値2016
Author(s)
金子昌信
Organizer
第61回代数学シンポジウム
Place of Presentation
佐賀大学理工学部
Year and Date
2016-09-08 – 2016-09-08
Invited
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