2015 Fiscal Year Research-status Report
複雑ネットワーク上の確率及び量子モデルの統一的理論の構築に向けて
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15K13443
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
今野 紀雄 横浜国立大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (80205575)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 量子ウォーク / 局在化 / 四元数 / 極限定理 / 時間平均極限測度 / 定常測度 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究目的の、特に量子ウォークに関して、以下のような結果を得ることができた。[1] 量子ウォークを定めるユニタリ行列の成分は複素数であるが、それを四元数に拡張した四元数量子ウォークを特に1次元系について提案した。さらに、1次元系を一般のグラフまで拡張した四元数量子ウォークに関して、その右固有値を求める簡易な手法を見つた。そして、それを用いることにより、具体的に四元数量子ウォークの右固有値と固有ベクトルを求めることに成功した。その結果より、通常の量子ウォークとの比較を行うことが可能となった。[2] 1次元系で2相系1欠陥をもつ量子ウォークの解析は非常に煩雑であるが、我々はその困難さを克服することにより、その極限定理を求めることに成功した。この結果は、1次元系のトポロジカル絶縁体などへの応用が期待される。[3] Wojcikモデルと呼ばれる、1次元系で1欠陥をもつ量子ウォークの中では比較的良く研究がされているモデルに対して、時間平均極限測度と弱収束極限定理を得ることが出来た。そのことにより、既に求められていた定常測度との比較を行うことが可能となった。[4] 1次元系の量子ウォークの全ての場合に関して、種々のタイプの定常測度を求めることが出来た。その中には、非一様な定常測度も存在する。例えば、量子ウォークで最も研究がされているアダマールウォークの場合には、従来一様な定常測度しか知られていなかったが、今回は2次の多項式オーダーで遠方にて発散するような、一見直観とは反するような新しいタイプの定常測度を発見した。[5] 2次元系で4状態の量子ウォークのあるクラスに対して、弱収束極限定理を求めることに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までの進捗状況としては、量子ウォークに関して、以下のような結果を得ることができた。[1] 量子ウォークを定めるユニタリ行列の成分は複素数であるが、それを四元数に拡張した四元数量子ウォークを特に1次元系について提案した。さらに、1次元系を一般のグラフまで拡張した四元数量子ウォークに関して、具体的に四元数量子ウォークの右固有値と固有ベクトルを求めることに成功した。その結果より、通常の量子ウォークとの比較を行うことが可能となった。[2] 1次元系で2相系1欠陥をもつ量子ウォークの極限定理を求めることに成功した。この結果は、1次元系のトポロジカル絶縁体などへの応用が期待される。[3] Wojcikモデルと呼ばれる、1次元系で1欠陥をもつ量子ウォークに対して、時間平均極限測度と弱収束極限定理を得ることが出来た。そのことにより、既に求められていた定常測度との比較を行うことが可能となった。[4] 1次元系の量子ウォークの全ての場合に関して、種々のタイプの定常測度を求めることが出来た。その中には、非一様な定常測度も存在する。例えば、量子ウォークで最も研究がされているアダマールウォークの場合には、従来一様な定常測度しか知られていなかったが、今回は2次の多項式オーダーで遠方にて発散するような、一見直観とは反するような新しいタイプの定常測度を発見した。[5] 2次元系で4状態の量子ウォークのあるクラスに対して、弱収束極限定理を求めることに成功した。以上より、おおむね順調に進展しているといえる。ただ、「古典モデル」「複雑ネットワーク」「量子ウォーク」3者間の関連が弱いので、平成28年度はそこを強化していきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
古典系の「確率モデル」の、例えばランダムウォークや無限粒子系の双対性の如き構造を踏まえ、「複雑ネットワーク」上の「量子モデル」、特に量子ウォークの研究をさらに深めたい。具体的には、様々な「複雑ネットワーク」を考慮に入れ込むことができるようなグラフを導入し、その上の解析手法を開発し、それを用いて種々の新しく興味深い結果を導き出したい。また、量子ウォーク自体も、グラフ上に一様なモデルだけでなく、昨年度部分的に結果を得たような1次元系で2相系1欠陥をもつ量子ウォークなど、場所に依存する量子コインによって定まる量子ウォークのようなより現実的なモデルについても解析を試みたい。実際、1次元系で2相系1欠陥をもつ量子ウォークの場合には、1次元系のトポロジカル絶縁体などへの応用が期待される。1次元系でも幾つか欠陥があるモデルの定常測度を求める試みを、従来の母関数法と比較しつつ行いたい。極端に空間に依存する量子ウォークの一例としてリースウォークが知られているが、その定常測度、時間平均極限測度、弱収束極限定理を求めたい。グラフ上の四元数量子ウォークの研究もさらに様々な具体的な例でその挙動を解析し、量子ウォークとの違いを明確に理解したい。四元数をクリフォード代数に拡張することも興味深い研究テーマになりえると思う。フーリエウォークは非常に解析が難しいモデルであるが、1次元系で3状態、2次元系で4状態の場合に、その定常測度、時間平均極限測度、弱収束極限定理を求めたい。グラフと彩色問題を絡めた新たな量子ウォークがごく最近提案されているが、その挙動についても研究をしたい。優先的選択のメカニズムを持つ複雑ネットワークに関連した量子ウォークの挙動を調べたことがあるが、このような立場からのアプローチもさらに深めたい。
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Causes of Carryover |
平成27年9月、本研究と研究テーマが近いグラフ上の量子ウォークに関する研究成果がarXivに発表された。具体的には、Renato Portugal、Establishing the equivalence between Szegedy's and coined quantum walks using the staggered model(arXiv:1509.08852)である。本研究遂行上、当該成果を踏まえてモデル化などを再検討し、平成28年度に新たな研究を行うなどやり直す必要が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究代表者が関連する研究の書籍を購入する。また必要があれば、関連する研究に詳しい研究者のもとに研究打合せを行う、或いは、研究者を招聘し専門的な知識を受ける。
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