2015 Fiscal Year Research-status Report
確率論的方法による離散シュレーディンガー作用素の逆散乱理論
Project/Area Number |
15K13447
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
磯崎 洋 筑波大学, 数理物質系, 教授 (90111913)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | シュレーディンガー作用素 / ランダムポテンシャル / S行列 / 逆問題 / 相関係数 |
Outline of Annual Research Achievements |
ランダムポテンシャルをもつシュレーディンガー作用素の連続モデルに対して、その散乱理論の基礎的研究を行った。先行研究として Helsinki 大学の M. Lassas, L. Paivarinta, E. Saksman による2次元のものがあり、さらに最近 T. Helin も関連した研究を行っている。このため、M. Lassas, T. Helin と e-mail によって研究連絡を行い、最近の研究情報を収集した。連続モデルのシュレーディンガー作用素に関しては3次元においても確率論的逆散乱理論が構築可能であることがわかり、基本的なアイディアを検討した。また、離散モデルの場合の研究方向について討論し、エネルギーとメッシュサイズ双方を考慮した漸近解析に将来の方向があることを確認した。Isozaki-Korotyaev の論文(Inverse problems, trace formula for discrete Schroedinger operators, Ann. Henri Poincare, 2012, 751-788)により離散モデルの時にはポテンシャルを持たないシュレーディンガー作用素のレゾルベントが適当な重みを付けたヒルベルト空間の中でエネルギーパラメータをスぺクトルに近づけたときに極限をもち、それがエネルギーに関する一様評価を持つことが知られている。特にエネルギーの端点付近における一様評価が重要であるが、メッシュサイズを小さくした場合の対応する評価に問題解決の鍵があることが予測できた。ポテンシャルによる摂動を導入した場合にはメッシュサイズとエネルギーパラメータ双方に関連した2重スケールによる漸近解析を行うべきことを議論した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ランダムポテンシャルをもつ離散シュレーディンガー作用素の逆散乱問題については先行研究がなく、問題の設定そのものが困難であった。当初は連続モデルの例を勘案してレゾルベントを複素エネルギー平面に解析接続し、無限遠の複素エネルギーに関する漸近展開を想定していたが摂動の影響を適切に取り出すことができなかった。そこで問題を半古典的に設定し、離散化のメッシュサイズとエネルギーとの二重スケールで考える方針にたち、見通しを得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
エネルギーとメッシュサイズ双方を考慮した漸近解析によるレゾルベント評価を行う。まず摂動項がない場合に行い、摂動項の処理もエネルギーとメッシュサイズ双方に注意して行う。ポテンシャルを含まない場合にこの評価を完成し、それと両立するポテンシャルの条件を探す。S行列のメッシュサイズに依存する評価、randomness に関する平均、分散を考察する。
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Causes of Carryover |
Helsinki 大学より研究者を招聘し、また研究代表者が Helsinki 大学に渡航して共同研究を行う予定であったが、双方の時間的条件が合わず、 e-mail のみによる連絡となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
Helsinki 大学より研究者を複数回招聘し、また研究代表者が渡航することによって使用する。
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Research Products
(7 results)