2015 Fiscal Year Research-status Report
非線形共鳴相互作用が支配する漸近的力学系と流体方程式
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15K13458
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山田 道夫 京都大学, 数理解析研究所, 教授 (90166736)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
竹広 真一 京都大学, 数理解析研究所, 准教授 (30274426)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 応用数学 / 流体 |
Outline of Annual Research Achievements |
空間的波動を伴う非線形系では,しばしば波動の非線形共鳴相互作用が非線形解の空間パターンを決定する上で重要な役割を担っている.特に非線形共鳴相互作用による時間発展は,波動の振動数が大きい極限において,非線形系の漸近挙動を記述すると期待される.本研究の目的は,線形波動解をもつ流体方程式を対象として,共鳴相互作用が卓越する状況を記述する漸近的力学系を支配する方程式を数学的に導き,さらに,得られた方程式の解の性質を,理論的および数値的に調べ,非線形共鳴相互作用系の性質とその役割を明らかにすることである.
本年度は計画初年度として,回転球面上の2次元 Navier-Stokes (NS) 方程式の解について高速回転の極限を研究した.これまでに2次元ベータ面CHM方程式の高速回転の極限方程式を得ている.この解析ではベータ面上ではフーリエモードの共鳴相互作用が簡明な形になることの利点が大きいが,回転球面上では球面調和関数の非線形相互作用となるため共鳴条件自体が複雑なものとなる.現在,この共鳴条件のもとでの共鳴相互作用方程式と2次元NS方程式の関係(解の収束性)の解析を継続して行っている.またこの共鳴相互作用方程式の数値解析も実行中である.これまでに,共鳴相互作用を行うモード(球面調和関数)のクラスターへの分解を行って,それぞれのクラスター内のダイナミクスを数値的に調べている.数値結果は2次元NS方程式におけるエネルギー逆カスケードは,クラスター内のダイナミクスによるものではなくクラスター同士の相互作用によるところが大きいことを示唆する結果を得ている.計画二年度は上記の解析とともに,この数値計算を組織的に行って,共鳴相互作用方程式の性質の解明を目指す予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究計画では線形波動を含む流体方程式において線形波動の非線形共鳴相互作用のみから成る漸近方程式とその解の性質を明らかにすることである.本年度は,流体方程式(CHM方程式)について高速回転極限を考え,その解が漸近方程式の解にどのように収束するかを検討し,同時に,漸近方程式において線形モードが非線形共鳴相互作用によってクラスター分解されることに注目して,それぞれのクラスター内部におけるダイナミクスとクラスター同士の相互作用によるダイナミクスを数値的に調べた.その結果,2次元Navier-Stokes方程式におけるエネルギー逆カスケードには,クラスター内部のダイナミクスではなく,クラスター同士の相互作用の効果が大きいことを示唆する結果を得た.この結果は回転球面二次元流における共鳴相互作用と非共鳴相互作用それぞれの役割の解明につながるものとして興味深く,次年度の研究に繋がるものである.
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Strategy for Future Research Activity |
計画初年度の研究から,漸近方程式における共鳴相互作用クラスター分解において,クラスター内部のダイナミクスとクラスター相互のダイナミクスの役割についての示唆が得られた.計画二年目以降は,この役割分担について研究を進めていく.各クラスター内部のダイナミクスのみからなる系が,全体として回転球面上の二次元流のどのような側面に対応するのかを明らかにすることが目的である.また同時にこの計算は,弱い非共鳴相互作用が系全体の振る舞いに果たす役割を明らかにすることにもつながるため,数値計算上の困難はあるものの,できるだけ大きな波数まで考慮したクラスターダイナミクスの数値計算を実行する予定である.さらにこの数値解析と同時に,回転球面上の二次元流方程式の解が漸近方程式の解に収束する過程についても,理論解析を継続する.
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Causes of Carryover |
当初,プログラム作成および調整段階での数値計算のため計算機購入を予定していたが,これを数理解析研究所の現有計算機上でのプログラム作成と試験計算に変更し,また外国人の招聘予定が調整により変更となったため.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
計画2年目以降は計算機を導入して数値計算を継続し,また外国人を招聘する予定であるため,研究計画には大きな変更はなく,次年度使用額も当初の予定に沿って使用する予定である.
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