2015 Fiscal Year Research-status Report
新星の窒素同位体比で探る太陽系起源・銀河系化学進化
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15K13466
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
河北 秀世 京都産業大学, 理学部, 教授 (70356129)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
新井 彰 京都産業大学, 神山天文台, 研究員 (30582457)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 古典新星 / 熱核暴走反応 / 分子 / プレソーラー粒子 / 太陽系起源 |
Outline of Annual Research Achievements |
世界で初めてC2分子の検出に成功した(かつ世界で2例目となるCN分子検出に成功した)2012年のへびつかい座新星V2676Ophに続く分子生成新星の検出を目指しているが、平成27年度は新しく発見された新星の数は少なく、モニタリング観測からは分子生成新星を発見することはできていない。過去のV2676Ophの可視光分光データの再解析を実施し、分子生成のトリガーとなる環境を明らかにするべく、吸収線が卓越したスペクトルの解析を行って、光球面温度の変化について調べた。V2676Ophは分子生成直前にほとんど輝線を示さない吸収スペクトルを示しており、これを超巨星の合成恒星スペクトルと比較した結果、ほぼ6000Kの光球面温度の場合に一致した。また、[Fe/H]については太陽組成よりもHが欠乏しており、新星爆発の熱核暴走反応によって、伴星から白色矮星表面にふりつもったガスの中でHが消費された結果と考えられる。この結果より、色超過E(V-I)と光球面温度の関係を較正し、他の日付において観測されている色指数(V-I)の値から表面温度を見積もった。その結果、V2676Ophは発見直後にすでに表面温度が7000K程度になっており、ほぼ一定の状態を保っていた事が判明した。これは非常に進化の遅い新星であることを意味している。その後、可視光極大を経て光球面温度は更に低下し、5000K程度になったところでC2およびCN分子が検出されていることが分かった。その後、光球面温度は4500K程度にまで下がっていることが、C2分子の吸収プロファイルから分かる。このような状況は光球面付近における紫外線強度の低下を生じ、分子生成を促進していたのではないだろうか。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成27年度には、当初、予想していたほどには新しい新星の発見がされておらず、モニタリング観測に成功した新星の数は,当初より少なくなっているため。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度も新たに発見された新星のモニタリングを継続する一方で、新規にモニタリングの協力研究者を獲得し、観測ポイントを増やすことを進めている。
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Causes of Carryover |
平成27年度に期待していたほどの頻度で新星があたらしく発見されなかったため、その観測データ処理等にかかる経費や観測機器の準備にかかる経費などが未執行となっている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度には前年度末から出現している新星などのデータがあり、計画に従って執行可能と考えている。具体的には、国立天文台すばる天文台等で観測に成功したデータの処理を進めるための業務委託やデータ処理に必要な計算機・ソフトなどの物品費、研究成果報告のための国際研究会参加などの旅費に充てる予定である。
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