2016 Fiscal Year Research-status Report
高エネルギー実験のための10ピコ秒 飛行時間測定器の開発
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15K13475
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
中條 達也 筑波大学, 数理物質系, 講師 (70418622)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
稲葉 基 筑波技術大学, 産業技術学部, 准教授 (80352566)
佐甲 博之 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 先端基礎研究センター, 研究主幹 (40282298)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 飛行時間測定器 / MRPC / 時間分解能 / DRS4 |
Outline of Annual Research Achievements |
H28年度は、異なるタイプの MRPC 検出器試作機を製作し、東北大学電子光理学研究センター (ELPH) にある GeV-ガンマ実験室に本検出器を持ち込み、電子ビームを照射し、検出器の性能評価実験を行った。実験を行った期間は、2016年11月7日~11月9日の3日間である。照射したのは運動量 460MeV/c の陽電子ビームであり、時間分解能、検出効率、およびそれらの印可電圧依存性を各 MRPC 検出器について調べた。その結果、SONY GM&O 社と共同で開発した MRPC 基板において、読み出し電極パッドの形状が 1.2 cm の細いものについて、太い 2.4 cm 幅のものより、時間特性が優れていたことが分かった。1段スタックで78 ps 程度の時間分解能が得られ、これを4段重ねることにより、約 40 ps の時間分解能が期待できる。
同時に、表面積が 20 cm x 30 cm の大型機、かつ4段スタックの MRPC も ELPH にて性能評価実験を行った。その結果、時間分解能に大きな位置依存性がみられ、パッドの中央で分解能が悪く、端で分解能が良くなった。これは検出器本体と、前置増幅器のインピーダンス不整合による反射波の影響があったためであることが分かり、その後の改善点、開発方針が明らかとなった。
2017年1月20日、筑波大学にて「Mini-Work Shop and Seminar on Resistive Plate Chamber at the University of Tsukuba」を開催した。参加者は 20名、活発な議論が行われた。またH29年度の ELPH でのMRPC検出器性能評価実験の申請を行い、4シフトの利用が承認された(2月)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
試作機の試作機とその性能評価実験を行い、順調に開発が進んでいる。特に今年度では東北大 ELPH にて実際の電子ビームを用いた実験を実施し、各個体の優れた点、問題点が明らかとなった。H29年度の開発方針が明らかとなり、J-PARC 実験への実機製作に向けて、大きく前進できた。
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Strategy for Future Research Activity |
H29年度は11月頃に予定している、ELPH でのMRPC検出器の性能評価実験に向けて、昨年度の成果を踏まえ、新たに MRPC を製作し、評価する。まずインピーダンス整合の手法を確立する。SONY GM&O と共同で、(1)検出器のグランドを決め、network アナライザやTDR を使って検出器自体のインピーダンス、シグナルの透過成分の実測、(2)電磁界シミュレーションと実測の比較、(3)(1)、(2)に基づく基板の製作と実測、の3点を実施する。実施はSONY 厚木オフィスで行う。
次に、上記の結果を踏まえて、まず1段型において最高時間分解能を引き出すべく、前置増幅側で高周波帯域のオペアンプを導入し、テストする。
最後にこれらを合わせて試作機を組み、11月に ELPH ビームラインにおいてテストを行う。同時に異なるタイプの MRPC を製作し、同時にテストする。得られた成果を国内外の学会で発表し、投稿論文としてまとめる。
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Causes of Carryover |
購入を予定していた検出器用ガス (R134a) の残量が予定よりも多く、来年度の購入にしたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
MRPC検出器部品などの物品費や、テスト実験遂行、学会発表のための国内旅費に使用する。
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