2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K13483
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
橋本 幸士 大阪大学, 理学研究科, 教授 (80345074)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | カオス / クォーク / ゲージ理論 / AdS/CFT対応 |
Outline of Annual Research Achievements |
場の量子論、とくにゲージ場の量子論において、量子論的な性質を損なわずにカオスの指標であるリャプノフ指数を計算することが本研究課題の目標の一つである。本年度は、N=2 超対称SU(N)量子色力学において、large N かつ 強結合極限をとることでAdS/CFT対応を用いることができ、その結果、メソンの一様凝縮についての時間発展を古典的に解析することに成功した。その結果は"Chaos in chiral condensates in gauge theories" Koji Hashimoto (Osaka U.), Keiju Murata (Keio U.), Kentaroh Yoshida (Kyoto U.). Phys.Rev.Lett. 117 (2016) no.23, 231602. として発表され、プレスリリースも行った。多数の研究会における招待講演を受け、研究成果を様々な研究コミュニティに報告した。 また、次に、AdS/CFTを用いて有限温度を取り扱う際に現れるブラックホールがユニバーサルなカオスを与えているとの研究結果に基づき、様々な状況下でブラックホールの地平面近傍での粒子の振る舞いがどのようにカオス的になるかを研究し、論文として取りまとめ、査読付きの雑誌にて出版した。この研究成果は、粒子を引っ張る力が多種多様な場合、またブラックホールの種類が多種多様な場合、いずれにもよらずにカオスの指標であるリャプノフ指数がブラックホールの表面重力すなわちホーキング温度にのみで決まることを示しており、カオスのユニバーサリティを表している。しかしこの成果において、重力側の粒子に働く力として高いスピンを持つゲージ場を用いると、カオスのユニバーサリティが破れることが示された。これは、高いスピンを持つ力が媒介する場合には、カオスの上限がそれらで置き換わってしまう可能性を示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究目標の一つである、「強結合理論におけるクォークの凝縮のカオス」の解明に関して、研究成果をまとめた論文を出版した。"Chaos in chiral condensates in gauge theories" Koji Hashimoto (Osaka U.), Keiju Murata (Keio U.), Kentaroh Yoshida (Kyoto U.). Phys.Rev.Lett. 117 (2016) no.23, 231602. 当初の目標は、様々な場の量子論にカオス指標をおいて比較することであるが、そのうち、N=2 超対称SU(N)量子色力学において、カオス指標をつけることができ、ゲージ群を変化させた時の比較が可能となった。 したがって、ある特定のクラスのゲージ理論の特定の演算子の期待値に関してではあるが、理論を変更した際にカオスがどの程度変わるのかをゲージ場の量子論で具体的に示した初めての例になっており、当初の研究計画が順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、超対称性がある場合の現在の解析を、超対称性がないより一般の場合に拡張し、同様の解析を行うことを試みる。これは、AdS/CFTですでに解析方法が確立していることから、本年度の研究成果をもとにすれば、解析が可能になると考えられる。 また、メソン演算子の真空期待値に関するカオスが計算されたが、それ以外の演算子の真空期待値に関しても解析が可能であるかを精査し、可能であると判断される場合にはその解析を具体的に実行する。ゲージ不変な演算子はメソン演算子以外にもそんざいするため、また、AdS/CFT対応におけるさまざまな重力側の対応物についても文献が多数存在するので、それらを統合的に用いることによって、他の物理量についてのカオスの計算を行う。 また、本年度は線形シグマ模型における解析を実行したが、その結果が相転移とカオスの関連を示唆しており、AdS/CFT対応における精密な検証を行ったのち、実際に相転移とカオスがどの程度関連しうるのかについて、研究を進める。
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Causes of Carryover |
本年度は、AdS/CFT対応を用いたカオスの計算成果を出すために、研究成果を発表する方法として招待講演のみに絞った展開を行った。そのため、研究会を開催したり、研究代表者が他機関を長期訪問するなどしておおきな研究方針を検討することは行っていない。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2017年度は、カオスに関する研究会を主宰して、研究成果を発表したの研究者との相互理解を深めるほか、同様の研究を行う他機関に長期滞在して研究成果を飛躍的に次のステージへ高める検討を行う。そのため、外国旅費や招聘のための旅費が必要となる。
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[Presentation] AdS/CFTとカオス2016
Author(s)
橋本幸士
Organizer
日大理工・益川塾連携 素粒子物理学シンポジウム
Place of Presentation
キャンパスプラザ京都
Year and Date
2016-10-30 – 2016-10-31
Invited
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[Presentation] CHAOS OF CHIRAL CONDENSATE2016
Author(s)
Koji Hashimoto
Organizer
NCTS SUMMER WORKSHOP ON STRINGS AND QUANTUM FIELD THEORY
Place of Presentation
TAIWAN NATIONAL CENTER FOR THEORETICAL SCIENCES(台湾)
Year and Date
2016-07-28 – 2016-07-28
Int'l Joint Research / Invited
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[Presentation] Chaos and quantum field theory2016
Author(s)
Koji Hashimoto
Organizer
RIKEN-OSAKA-OIST JOINT WORKSHOP “BIG WAVES OF THEORETICAL SCIENCE IN OKINAWA”
Place of Presentation
Okinawa institute of science and technology
Year and Date
2016-07-08 – 2016-07-08
Int'l Joint Research / Invited
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[Presentation] CHAOS OF CHIRAL CONDENSATE2016
Author(s)
Koji Hashimoto
Organizer
14TH WORKSHOP ON NON-PERTURBATIVE QUANTUM CHROMODYNAMICS
Place of Presentation
L’INSTITUTE D’ASTROPHYSIQUE DE PARIS(フランス)
Year and Date
2016-06-18 – 2016-06-18
Int'l Joint Research / Invited
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