2015 Fiscal Year Research-status Report
低質量暗黒物質直接探索のための有機半導体検出器開発
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15K13485
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
身内 賢太朗 神戸大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (80362440)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
熊木 大介 山形大学, 理工学研究科, 助教 (80597146)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 暗黒物質 / 有機半導体 / 検出器 |
Outline of Annual Research Achievements |
暗黒物質直接探索実験は、イタリアのDAMAグループ等の「検出の主張」と米国のXENON100グループ等の「排除の主張」が対立しているが、10GeV以下の質量では許容される領域がある。低質量暗黒物質は、比較的原子量の小さい物質で低閾値の検出器を製作することで感度の高い探索実験を行うことができる。米国のDAMIC実験は40eVのCCDを用いて、わずか1gの検出器で100kg以上の質量の検出器に匹敵する感度を得た。 本研究は、i)有機半導体を放射線検出器として動作させ、閾値0.5keVを達成、ii)暗黒物質探索実験に必要とされる長期安定性や大質量化への要素技術を開発することを目的とする。 平成27年度の研究では、放射線検出器としての動作確認実験を行った。α線、重粒子線を照射する試験を行い、重粒子線の照射によって検出器としての動作が確認された。一方でα線の照射に対しては、線源強度と検出面積の関係から、期待される計数率が低く、統計的に優位な観測はされなかった。重粒子線の照射による試験では、多重入射の問題などから、シグナル/ノイズ(S/N)比の定量評価がむつかしいため、アルファ線の照射による評価へ向けてのS/Nの改善が必要であることが判明した。S/Nの改善のためには、素子の厚膜化(現在は0.5μm)、ノイズの低減(現在は、アンプまでケーブルによる接続)、正孔の長寿命化(現在の寿命は不明)が有効である。それぞれで数倍の改善をおこない、粒子線検出器としての定量的な動作を確認が有機半導体を暗黒物質探索実験へと応用するための重要な開発要素であることが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度は、○有機半導体測定システムの確立及び○有機半導体検出器を製作、閾値を低下させるための材料・構造パラメータ探索。に関しての研究を予定、放射線検出器としての動作確認に初めて成功するなど、予定通り順調に研究を行った。 有機半導体FETについて、実績のある材料を用いて、15種類の形状の検出素子を製作した。これらについて、電圧電流特性を調べたのちで、リーク電流の小さい素子について、原子力研究機構高崎量子応用研究所のTIARA加速器施設にて450MeVに加速されたXeイオンを照射したところ、バックグラウンドと比較して、優位に信号が観測された。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度の研究で、検出器としての動作が初めて観測されたので、次のステップとしては定量評価となる。重粒子線による動作確認では、多重入射の影響などにより、信号の大きさの定量評価が難しい。このため、α線による実験室での試験を計画しているが、このためには、素子の面積の拡大による計数率の向上及び素子の形状の最適化による電荷移動度の向上を行う必要がある。こうした改善を施した素子を製作、検出器の有効面積、有効厚、閾値などを定量的に測定したのちに、暗黒物質探索実験に必要とされる性能--特にエネルギー閾値--の改善を行う。
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Research Products
(4 results)