2016 Fiscal Year Research-status Report
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15K13498
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
田仲 由喜夫 名古屋大学, 工学研究科, 教授 (40212039)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 昌利 京都大学, 基礎物理学研究所, 教授 (30313117)
田口 勝久 名古屋大学, 工学研究科, 研究員 (90725194)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ワイル半金属 / ラインノード半金属 / 異常ホール効果 / カイラル磁気効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
(光誘起カイラル磁気効果の理論的研究) 昨年度の光誘起カイラル磁気効果の研究を引き続き行った。研究成果はPhysical Review B誌にRappid Communication として掲載された。また積極的に国際会議で研究成果の発信と研究の発展を狙った議論を行った。その結果、新たに取り組むべき課題が見つかった。本研究対象物質の一つであるワイル半金属のエネルギー分散は一般的にワイル方程式に従う項だけでなくワイル方程式の分散を"傾ける"役割をする項の存在も一般的には許される。実際の物質TaAsなどにおいてもその項の存在は禁止されていない。そこで本年度はそのような"傾ける"項が加わったとき、昨年度研究した光誘起カイラル磁気効果がどのように変調されるのか、といったことを微視的理論に基づいて解析する。 (光誘起異常ホール効果の理論的研究) 昨年度は本研究対象物質の一つであるラインノード半金属における光誘起異常ホール効果の研究も行った。ワイル半金属は点ノードの分散であるのに対して、ラインノード半金属は線ノードの分散を持つ。これらの分散のノードの違いが輸送現象に影響を与えることが知られている。本研究では円偏光を時間反転対称性のあるラインノード半金属に照射することによって、ラインノード半金属の線ノードの分散を点ノードの分散に変化させることができることを理論的に提案した。このノードの変化は光の照射方向とカイラリティに依存することから、このノードの変化は円偏光の持つ施光性と時間反転対称性によるものであることを明らかにした。さらにこのノードの変化を検出する方法について議論した。この研究成果は香港科技術大学のK.T. Law教授らとの国際共同研究によるものであり、その成果はPhysical Review B誌に掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画書に書いたとおりにおおむね研究は進んでいると考えられる。軸性流電流変換理論の解析的計算はおおむね終わっており今年度は順調に研究を行うことができる。
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Strategy for Future Research Activity |
(軸性流-電流変換理論) これまでに我々はワイル半金属・磁性体接合において、磁性体からのスピン注入により電流を伴わない純粋な軸性流生成の理論を解明した。この軸性流は、磁性体の磁化のダイナミクスが生み出す実効的な電場を起源としたものであった。空間的に非一様な磁化構造を持つ磁性体での磁化ダイナミクスは実効的な電場だけでなく実効的な磁場も存在することが知られている。これまでの軸性流生成理論を発展させて、磁化ダイナミクスによる実効的な電場・磁場効果による軸性流をグリーン関数法により計算する。 ワイル半金属では電場と磁場を平行に印加することによってカイラル異常という効果が存在し、カイラル異常によって電荷を伴う軸性流が生じることが知られてきた。その一方で、磁化による実効的な電場・磁場によるカイラル異常の存在は確認されていない。本研究では、先の軸性流の計算結果を用いて、実効的な電場・磁場によるカイラル異常の存在を考察し、このカイラル異常が軸性流に与える影響を明らかにする。以上の研究は、時間反転対称性破れ由来のワイル半金属だけでなく、空間反転対称性破れ由来の、具体的には、年度研究計画書に基づいて萌芽研究初年度に提案した軸性流生成理論を拡張して、生成した軸性流を電流に変換する方法を微視的理論に基づいて提案する。考察するモデルは磁性ワイル半金属を考慮し、その系の磁化の空間変化ならびに時間変化を考慮した摂動計算を通して軸性流ならびに生成される電流との相関を解析的に明らかにすることを目指す。 (ワイル半金属におけるらせん波による電気磁気効果) ワイル半金属におけるらせん波による電気磁気効果の解析結果をまとめる。特にらせん波の持つ光の軌道角運動量がそのような電気磁気効果にどのように反映されるのかに着目して研究を推進する予定である。
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Causes of Carryover |
遷移金属大カルコゲナイドの論文は、解析計算がまだ終了しなかったため発表ができなかった。また、トポロジカル絶縁体の電磁応答現象、スピン軌道相互作用昨年度まだ計算の途上であったたために、成果報告が間に合わなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
論文投稿に関する英文校正にかかる費用、研究に関する打ち合わせの旅費、学会における成果報告に使用する予定。解析計算に基づく数値計算を行うためのコンピューターの購入を予定している。
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