2015 Fiscal Year Research-status Report
トロイダルモーメントを内包する金属磁性体における電流誘起磁気効果の検証
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15K13509
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
網塚 浩 北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (40212576)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 強相関電子系 / 物性実験 / 物性理論 / 電気磁気効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
奇パリティ拡張多極子の一つであるトロイダルモーメントが整列した系において理論的に予想された新奇な電気磁気効果を実験で検証することが本研究の目的である。現実の強的トロイダル秩序系として最有力候補である層状ウラン化合物UNi4Bの単結晶を用い、層に垂直にトロイダルモーメントが整列した低温秩序相において、相内に流した電流によって、電流とトロイダルモーメントに垂直な方向に磁化が発生すること、また、ゼロ磁場において同じく相内の電流に対してホール電圧が発生し、ホール電圧が電流の2乗に比例するという理論予想を検証するのが本年度の主たる目的であった。 これらの実験を行った結果、先ず電流誘起磁化については、幾つかの異なる試料形状を用いた慎重な測定において再現性が確認され、確かにこの現象が生じていることがわかった。また、誘起される磁化が電流密度に比例して増大することを確認し、電流誘起磁化の感受率を定量的に明らかにした。しかしながら、同時に、誘起される磁化が電流の方向にほとんど依存しないことがわかり、電流と磁化の異方的な相関を予想する理論とは単純には一致しないことがわかった。この原因を解明するのが次年度の課題である。次にホール効果の実験では、実験の精度内でホール電圧に電流の2乗に比例する寄与は観測されなかった。今後、オフセット電圧を除去し、S/Nを向上する工夫を施して再実験に望む計画である。さらに、同様の現象の典型例となり、ウラン系より扱いやすい希土類金属でのトロイダル秩序物質の探索を行い、幾つかの候補を見いだした。また、中性子散乱実験を行うために国外での試料を合成し、国外の施設を利用して実験を行う国際連携体制の構築を行い、実際にUNi4B単結晶の作製に着手した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
電流磁気効果の測定は概ね予定通りに進んでいるが、研究の進展に伴い、電流と磁化の異方性について理論予想では説明できない振る舞いがあることがわかった。このため、先ず構造解析を進める必要が生じている。異常ホール効果の検証実験についても計画に沿って研究が進んでいるが、さらに実験精度に改善の余地がある。
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Strategy for Future Research Activity |
・チェコ共和国、カレル大学にてUNi4Bの単結晶を作製し、基礎物性の確認を行った後、フランスもしくはイギリスにおいて、中性子散乱実験を行う。 ・ホールプローブを用いた表面磁化測定システムを作製し、電流誘起磁化の異方的性質を明らかにする。 ・他の希土類化合物について同様の研究に着手する。 ・論文を執筆する。
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Causes of Carryover |
実験の進展に伴い、物性の結晶異方性をさらに詳しく調べる必要があることがわかり、本研究の対象物質であるUNi4Bの単結晶を新たに作成する必要が2016年2月に生じた。在庫の元素材料を用いてこれを行ったが、よい結晶性のものが結局得られなかった。そこで高純度の元素材料の入手を再検討する必要が生じたが、海外業者も含めての検討となり予想以上の日数を要したため、年度内の完了が困難となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本研究に関して、国際共同研究を行っているチェコ共和国カレル大学のセコフスキー教授と、現在、必要な元素材料純度と目的の物性評価との関係について再検討を進めており、2016年度の5月には結論を出して、元素材料購入に本予算を充当する計画である。
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Research Products
(10 results)