2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K13520
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
佐々木 豊 京都大学, 低温物質科学研究センター, 教授 (60205870)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 超流動ヘリウム3 / ランダムネットワーク |
Outline of Annual Research Achievements |
ランダムネットワーク構造を持つ多孔質ガラスを超流動体も透過することのない樹脂に埋め込んだ状態で、細孔中に液体ヘリウムを充填することのできる特殊構造セルの開発に成功した。そのことにより、多孔質ガラス内の細孔内部に充填された液体ヘリウム3のNMR信号を細孔外部からのバルク信号の混入を避けて取得することに成功した。また、超流動ヘリウム3の転移温度2mKより充分低温まで冷却し、細孔中の液体ヘリウム3がバルク同様に超流動転移をおこすことを確認した。純粋なヘリウム3を充填した場合には多孔質ガラスの下地に含まれている磁性不純物の効果が顕著に現れ、NMR信号の吸収線幅は増大したが、少量のヘリウム4をガラス表面に優先的に固着させてから細孔中に液体ヘリウム3を導入することで、下地の磁性不純物効果は除去された。また、ヘリウム4層の厚さをコントロールすることで、細孔中に閉じ込められた液体ヘリウム3の細孔壁での境界条件を拡散的から鏡面的に変化させることができた。これらの開発成果を元にして、超流動ヘリウム3の巨視的波動関数の位相についてのフラストレーションや局在BCS相の出現が期待されるパラメータ領域を探索することとした。限られた予算配分の元で大量に寒剤を消費する大型希釈冷凍機を運転可能な時間は限られており、ベストをつくした探索を行ったが、興味深い兆候を発見することはできなかった。また、コヒーレンス長の数倍程度の口径をもつ細孔中では、Tc近傍でPolar相が安定化する可能性も期待されていたが、実験測定の結果からはバルクで安定なABM状態とは異なる状態になっていることを示唆するデータは得られなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
限られた予算配分のなか、可能な限りの運転測定時間を確保して研究計画を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度も継続してパラメータを変えた測定を行うことで、当初目的に沿った成果を追求する。
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Causes of Carryover |
本計画による出費の大半は冷凍機運転のための高額な寒剤費用であり、1週間当たり5万円に相当するが、実験測定自体には1セットのデータ当たり数週間の期間がかかり、予算の範囲内で実験を終了するためには、多少の半端がでることはやむを得ない。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度にパラメータを変更した測定を再開するので、その際に残金もあわせた予算を前提として運転計画を決定する。
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Research Products
(3 results)