2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K13521
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
常盤 欣文 京都大学, 学内共同利用施設等, 研究員 (30737458)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 磁気モノポール / スピンアイス / 熱伝導 |
Outline of Annual Research Achievements |
スピンアイスの興味深い物理は多くの注目を集めてきた。我々は、量子揺らぎがスピンアイスにどのような影響を及ぼすのかを調べるため、量子スピンアイスYb2Ti2O7とPr2Zr2O7の熱伝導測定を行った。 Yb2Ti2O7はTC=0.2Kで強磁性状態に一次相転移する。これまでの研究から、TC以上、モノポールの励起エネルギー2J=4K以下の温度領域においてスピンアイス相関を持つことが報告されている。我々の測定により、この温度領域でのみ、磁場とともに熱伝導がゼロ磁場近傍では減少し、その後増加に転じることが分かった。この非単調な磁場依存性はスピン‐フォノン散乱と低磁場領域における磁気励起による熱伝導によって良く説明される。この磁気励起の寄与は、スピンアイス相関が発達している温度領域にのみ現れることから、磁気モノポールの伝導と考えるのが最も自然である。そして、解析から得られたモノポールの励起エネルギーは、古典モノポールで予想されるものより大きく減少しており、量子揺らぎによりモノポールが分散を持っていることを示唆している。これらの結果は、拡散によって運動する古典モノポールとは対照的に、分散を持つ量子モノポールが、長い平均自由行程を伴って結晶中をコヒーレントに運動していることを示唆している。 一方、Pr2Zr2O7では、極低温まで磁気秩序は観測されておらず、量子スピン液体状態が実現している可能性がある。我々の測定によって、約0.2K以下で、温度減少とともに熱伝導割る温度が異常増大することが分かった。モノポールの励起エネルギーは1.6Kと見積もられており、0.2Kではモノポール密度は無視できるほど小さくなっている。したがって、この異常は、スピンアイスの縮退を解く新しい素励起 「フォトン」の存在を示している可能性がある
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
我々は量子揺らぎの強いスピンアイスYb2Ti2O7の、磁場中極低温における熱伝導測定を行った。この測定から、磁気モノポールの熱伝導を観測し、その特異な振る舞いを明らかにした。その結果をNature Communicationsに論文として発表した。(Nature Communications 7 10807 (2016))これは平成27年度に予定していた計画であり、すでに達成することが出来た。 現在は、平成28年度に予定していたPr2Zr2O7の測定が、ある程度進んでいる状況である。我々の測定結果は、新奇素励起「フォトン」の兆候を示している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度の計画は、初年度に行ったYb2Ti2O7の熱伝導測定で得た知見を基に、Pr2Zr2O7などといった多くの注目を集めている量子スピンアイス物質の熱伝導研究につなげることである。現在、すでに新奇素励起「フォトン」の兆候を見つけることが出来ている。様々な磁場方向や熱流方向依存性を測定し、この素励起の未知なる性質を明らかにする。新奇素励起のどのような性質が期待されるか、また実験結果の解釈など、理論家と議論をしつつ研究を進める。
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Research Products
(17 results)
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[Journal Article] Possible observation of highly itinerant quantum magnetic monopoles in the frustrated pyrochlore Yb2Ti2O72016
Author(s)
Y. Tokiwa,T. Yamashita, M. Udagawa, S. Kittaka, T. Sakakibara, D. Terazawa, Y. Shimoyama, T. Terashima, Y. Yasui, T. Shibauchi, Y. Matsuda
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Journal Title
Nature Communications
Volume: 7
Pages: 10807
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Acknowledgement Compliant
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[Presentation] ハイブリッド超格子CeRhIn5/CeCoIn5における量子臨界性2016
Author(s)
石井智大, 戸田琳太郎, 鳥井陽平, 成塚政裕, 下澤雅明, 花岡洋祐, 笠原成, 常盤欣文, 笠原裕一, 芝内孝禎, 寺嶋孝仁, 松田祐司
Organizer
日本物理学会年次大会
Place of Presentation
東北学院大学
Year and Date
2016-03-22
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[Presentation] 極低温熱伝導率測定からみた重い電子系超伝導体CeCu2Si2の超伝導ギャップ構造2016
Author(s)
大西隆史, 寺澤大樹, 山下卓也, 笠原裕一, 常盤欣文, 橘高俊一郎, 榊原俊郎, H. S.Jeevan, C. Geibel, M. Konczykowski, 芳賀芳範, 芝内孝禎, 寺嶋孝仁, 松田祐司
Organizer
日本物理学会年次大会
Place of Presentation
東北学院大学
Year and Date
2016-03-22
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[Presentation] 極低温磁場侵入長測定と不純物効果から見た重い電子系超伝導体CeCu2Si2のギャップ構造2016
Author(s)
竹中崇了, 水上雄太, 新井佑基, J. Wilcox, C. Putzke, A. Carrington, S. Seiro, H. S. Jeevan, C. Geibel, M. Konczykowski, 常盤欣文, 松田祐司, 芝内孝禎
Organizer
日本物理学会年次大会
Place of Presentation
東北学院大学
Year and Date
2016-03-22
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[Presentation] ハイブリット超格子CeRhIn5/CeCoIn5の超伝導特性2016
Author(s)
鳥井陽平, 石井智大, 戸田琳太郎, 成塚政裕, 下澤雅明, 花岡洋祐, 笠原成, 常盤欣文, 笠原裕一, 芝内孝禎, 寺嶋孝仁, 松田祐司
Organizer
日本物理学会年次大会
Place of Presentation
東北学院大学
Year and Date
2016-03-22
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[Presentation] 熱伝導率測定による量子スピン液体Pr2Zr2O7中のフォトン励起の観測2016
Author(s)
寺澤大樹, 大西隆史, 山下卓也, 常盤欣文, 宇田川将文, 木村健太, Mario Halim, 中辻知, 寺嶋孝仁, 芝内孝禎, 松田祐司
Organizer
日本物理学会年次大会
Place of Presentation
東北学院大学
Year and Date
2016-03-21
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[Presentation] Evidence for fully-gapped superconductivity in heavy-fermion CeCu2Si22016
Author(s)
Y. Kasahara, D. Terazawa, T. Yamashita, T. Onishi, Y. Tokiwa, T. Terashima, Y. Matsuda, T. Takenaka, Y. Mizukami, T. Shibauchi, J. Wilcox, C. Putzke, A. Carrington, S. Kittaka, T. Sakakibara, H. S. Jeevan, S. Seiro, C. Geibel, Y. Haga
Organizer
アメリカ物理学会
Place of Presentation
アメリカ ボルチモア
Year and Date
2016-03-15
Int'l Joint Research
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[Presentation] CeCoIn5系トリコロール超格子によるグローバルな空間反転対称性の破れの導入2015
Author(s)
成塚政裕, 遠藤僚太, 戸田琳太郎, 石井智大, 下澤雅明, 花岡洋祐, 笠原成, 常盤欣文, 笠原裕一, 芝内孝禎, 寺嶋孝仁, 松田祐司
Organizer
日本物理学会秋季大会
Place of Presentation
関西大学
Year and Date
2015-09-17
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[Presentation] 重い電子系ハイブリット超格子CeRhIn5/CeCoIn5における輸送測定2015
Author(s)
石井智大, 遠藤僚太, 戸田琳太郎, 成塚政裕, 下澤雅明, 花岡洋祐, 笠原成, 常盤欣文, 笠原裕一, 芝内孝禎, 寺嶋孝仁, 松田祐司
Organizer
日本物理学会秋季大会
Place of Presentation
関西大学
Year and Date
2015-09-17
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