2015 Fiscal Year Research-status Report
粉体層中を準静的に動く球体間に働く相互作用についてのシミュレーション研究
Project/Area Number |
15K13534
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
吉岡 直樹 国立研究開発法人理化学研究所, 計算科学研究機構, 研究員 (10548209)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
島田 尚 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (90431791)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 粉体物理 / 計算統計力学 |
Outline of Annual Research Achievements |
粉体はマクロな粒子であり、非弾性衝突やクーロン摩擦により運動エネルギーが熱に散逸する、粒子サイズが分散しており自明な結晶状態が存在しないといった特徴があり、通常の流体とは流動性が非常に異なる。本研究では、粉体層中において近接した2つの球体を準静的に動かした際に両球体に働く力を調べることで、その普遍則とより一般的に「粉体溶媒」の理解を得ることを目的とする。 本年度は、粉体の模型として、単純な剛体円盤を用いた2次元系のシミュレーションを行った。ただし、接線方向の摩擦力と粒子の回転は導入していない。このような系の場合、イベントドリブン分子動力学シミュレーションという手法が適用できる。 まずは単一球体を一定の遅い速度で並進させた場合についての抵抗力の解析を行い, 系のサイズや粉体の粒径分散の影響、速度依存性や反発係数依存性、密度依存性について調べた。特に速度と密度については強く依存することを確認した。速度依存性については速度の2乗に比例するBagnold則が得られた。密度依存性については低密度ではほぼ密度について線形に増加し、高密度では線形よりも早く増加してある密度で発散するふるまいを見出した。また、円盤による圧縮のため周囲の粉体には高密度領域が生じるが、その高密度領域と背景低密度領域の境界が放物線状になることを見出した。 次に、直径の等しい2円盤の並進モードについてシミュレーションを行った。円盤に働く抵抗力を進行方向と垂直方向について測定したところ、円盤間距離に対して非単調な変化をすることを見出した。垂直方向の抵抗力については円盤間に粉体粒子が1つ入り込める程度の距離でピークを持ち、粉体と円盤の衝突回数の発散に起因すると考えられる。一方、進行方向については円盤間距離が1円盤の時の高密度粉体領域の幅程度の時にピークを持ち、その2倍程度のところで1円盤での抵抗力程度まで減少する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
計画ではソフトコアを吉岡が、ハードコアを島田が担当して研究を行うことになっていた。 ハードコアについては順調に研究が進展したものの、ソフトコアについては残念ながら研究準備段階にとどまっている。これは、吉岡の所属が2015年10月に理化学研究所計算科学研究機構に移ったことで研究の進展に遅れが生じたことが理由である。 また、交付申請時に計画していた、2円盤が縦列したときの抵抗力の研究も行うことができなかった。理由の一つとしては、並進モードについて想定よりも時間がかかったことが挙げられる。もう一つの理由として、現在のシミュレーションの設定では進行する円盤の後方は大きな空べき領域ができるため、縦列モードでの2円盤の相互作用は今の設定では生じないからである。 なお、海外の研究者とディスカッションをすることを計画していたが、互いの都合が合わなかったため、平成27年度は本研究課題に関する海外渡航は予定より少なくなった。
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Strategy for Future Research Activity |
ハードコアについては並進以外のモードや3次元系の研究を行う。並進以外のモードについては、現在の系の設定では縦列モードの抵抗力は調べられないので、円盤を斜めに配置した場合について研究を行う。また、壁を振動させる、重力をかけるなどして空べきが起こらないようにして縦列モードなどの抵抗力を調べる。 ソフトコアは引き続き準備中のシミュレーションの完成を急ぎ、ハードコアの昨年度の結果に対応する2次元並進モードの研究を行う。
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Causes of Carryover |
主に旅費と人件費について次年度使用額が生じた。旅費については、予定していた海外の研究者とのディスカッションが、お互いの都合が合わず実現できなかったことが理由である。人件費については、吉岡が理化学研究所に異動したこともあり、必要がなくなったことが理由である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
主に旅費として使用する。前年度に海外の研究者とディスカッションができなかったことを考慮し、長期間の海外滞在を行う。
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Research Products
(6 results)