2015 Fiscal Year Research-status Report
量子系のエネルギー準位反発にみられるフラクタル的挙動の研究
Project/Area Number |
15K13538
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
牧野 浩典 東海大学, 情報理工学部, 准教授 (40338786)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | リュービルメジャーの計算 / 周期点の決定 / フラクタル的な振動の検出 / 高速なアルゴリズムの開発 / エネルギー準位 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度の前半は本課題を実行する基盤固めとして、レモン型ビリアードの古典力学系に生じるフラクタル構造の幾何学的な性質を理論的に解明する研究に取り組んだ。パラメータ空間内における周期軌道の安定性を線形化安定性解析によって調べ、分岐パラメータ値の厳密解を2周期から8周期点まで決定した。続いてカオス領域の相体積比(リュービルメジャー)を数値計算により精密に求め、パラメータ空間内、特に分岐点のまわりにおける挙動を詳細に分析した。高性能なワークステーションを用いて相体積比を精密に計測し、相体積比のパラメータ挙動にフラクタル的な振動を検出するとともに分岐図との対応を明らかにすることができた。 古典系の結果が順調に完了したため、今年度後半からは量子系のシミュレーションプログラムの高速化に取り組んむとともに、予算で研究購入した高速なワークステーションを用いて量子系のエネルギー準位を数値的に求める準備に取り掛かった。シミュレーションプログラムの高速化はかなり順調に進み、研究代表者が2001年に発表した研究論文の段階で用いたプログラムと比べ、約20倍の計算スピード(実行時間1/20)が得られるようになった。2016年2月から量子系のエネルギー準位の計算にとりかかている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画では古典系のフラクタル構造の分析と量子系の数値計算の準備までであったが、双方とも年度中に完了することができ、次年度の計画としていた量子系の数値計算を実行段階に進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は量子系の数値計算に本格的に取り掛かる。古典系の各分岐パラメータ値の前後で量子系のエネルギー準位列を数値的に精密に求め、ベリー・ロブニック分布関数により準位反発の大きさを定量化、量子系のベリー・ロブニックパラメータが古典力学系のカオス領域相体積比のパラメータ挙動を定性的に再現できることを示す。また、量子系の準位をその成分に分離し、相互エントロピーを用いて準位間の独立性を検証することにも取り組む。エネルギーが低く微細構造を再現しきれない場合にはプランクセルのサイズに配慮しながら更に高いエネルギー値で数値実験を繰り返す。フラクタル性を量子系の側から検出できることを明らかにする。
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Research Products
(2 results)