2017 Fiscal Year Research-status Report
量子系のエネルギー準位反発にみられるフラクタル的挙動の研究
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15K13538
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
牧野 浩典 東海大学, 情報理工学部, 准教授 (40338786)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 準位統計 / フラクタル / 量子カオス |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は前年度まで実施した高速ワークステーションによる量子系の数値計算の結果を分析・評価し、論文にまとめる作業に取り掛かった。また、論文にまとめる段階で量子状態の局在に関する分析を行う必要が生じたため、伏見関数を用いた追実験を実施した。伏見関数が位相空間の微細構造に局在してゆく過程を有効プランク定数を用いて明かにした。数値実験により以下の事が明らかになった。 (1)深い半古典極限ではベリー・ロブニックパラメータがより微細な振動を拾うことができた。 (2)低エネルギー領域ではカオス領域とトーラス領域の双方に振幅を持つトンネル状態が多数発生した。一方、高エネルギー領域(深い半古典領域)では量子状態が古典系の微細構造にある程度のスケールまで局在できるようになるが、プランク体積を微細構造の体積よりも十分小さな値に設定しているにも関わらず、カオス領域とトーラス領域の双方に振幅を持つトンネル状態が依然として消滅することは無かった。 (3)(2)の条件下でベリー・ロブニックパラメータを分析したものの、ベリー・ロブニックパラメータが自己相似振動を再現できるパラメータ領域は限定的であり、古典系の自己相似性を完全に再現することは不可能であった。 (4)分岐点の前後におけるエネルギー準位間隔分布の挙動を説明するため、新たに2点相関関数に対する数値的実験を行い、グッツウィラーの跡公式を基礎とする周期軌道理論により、その振る舞いを理論的に説明した。2点相関関数は分岐点の前後において、跡公式から導かれる予想をサポートする顕著な振動が生じることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
当初の計画段階では予期していなかった家庭の事情により、2016年9月より1年間、研究ができない期間が発生しました。延長申請により計画全体の期間を1年間伸ばし、予定していた研究計画を実施することになっています。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は昨年度までの研究成果を論文にまとめ発表します。1本目の論文は自己相似振動について報じる内容で投稿し、受理されています。目下、2本目の論文を執筆中で、量子状態の局在とベリー・ロブニック理論の検証に論点を絞っています。本年秋に学会で成果報告を行う予定です。
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Causes of Carryover |
論文の執筆過程で必要になる印刷費や通信費、ワークステーションの運用に必要な維持費(部分的な修理)など少額ながらも最低限の予算を残す必要があったため、予算を0にはせずに繰り越しました。
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Research Products
(1 results)