2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K13543
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
北島 昌史 東京工業大学, 理工学研究科, 准教授 (20291065)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 超励起分子 / 分子ダイナミクス / 電子モノクロメーター |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、従来の実験 手法では得られなかった、解離のさなかの超励起分子をプローブする、全く新たな超励起分子の解離のダイナミクスの直接的観測手法の開発を目的としたものである。具体的には、電子ドップラー効果を利用した新しい実験原理の提案と、これに基づく実験装置の製作と検証である。 本年度は、電子ドップラーシフトを観測するための実験装置を製作した。超励起分子生成のための励起源には、光学的禁制状態を生成できる低エネルギー電子ビームを用い、入射電子方向に対して全方向で放出電子を一度に測定することが可能なトロイダル型電子アナライザーをベースに、イオン・アナライザーおよび高分解能電子モノクロメーターを組み合わせたものを製作した。特に、本実験 を成功させるために重要な、十分な強度の高分解能電子ビームを供給できる電子モノクロメーターの製作に注力した。 これまでは長い計算時間が必要なために困難であった、静電型電子モノクロメーターを大電流領域で用いた場合の空間電荷効果を考慮した電子軌道シミュレーションを精密に行い、これに基づいて設計・製作を行った。新たに設計・製作した電子モノクロメーターの性能試験の結果、従来の一般的なものに比べて、飛躍的に高い性能を発揮できることが明らかになった。電子モノクロメーターは本研究のみならず、汎用に用いられる装置であり、本研究による設計手法により製作した装置が、従来型に比べて大幅に高い性能を示したことは、大きな成果である。 本年度は、また、計画に従い多重同時計数システムの構築も行い、実験装置の基礎開発を完了した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画どおりに、実験装置の開発を進めることが出来た。特に、研究の成否を左右する高性能な電子モノクロメーターの開発において、必要な性能を発揮できるものが製作出来たことは大きな進展である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度での装置の基礎開発に基づき、研究計画に従い、電子アナライザーおよびイオン・アナライザーの調整を行った上で、同時計数実験を開始する。放出電子とフラグメント・イオンとの二重同時計数実験を行い、解離のさなかに自動電離を起こし放出された電子による電子ドップラー効果の観測を行う。標的分子を計画どおり、水素分子を用いる。
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Causes of Carryover |
研究計画遂行のための打ち合わせのために旅費を計上したが、当初計画時よりも物品費が上昇したため、旅費の一部を物品費に充てることとなり、一方で研究の進展に伴い研究打ち合わせが不要となったためである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度においても物品費の上昇は避けられない状況でるので、次年度使用額は真空部品をはじめとする物品費として使用する予定である。
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