2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K13548
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
箕田 弘喜 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20240757)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | カソードルミネッセンス / 電子光子相関顕微鏡法 / 発光分光 / イメージング |
Outline of Annual Research Achievements |
CL強度は支持膜によって異なり、炭素薄膜よりSiN薄膜上のGFPのCL強度が大きいことが予備実験によって分かっている。通常の電子顕微鏡による像観察時に発生する問題として、試料の帯電がある。この帯電は、電子照射に伴う2次電子の発生に起因した正の帯電である。この経験的事実と、蛍光増強効果の実験を通じて起こる現象を統合して考えると、膜の違いによる蛍光増強効果の違いは、試料周りの電気伝導度の違いによる可能性が高いと考えられる。これを確認するために、既存のシステムに分光器を取り付けて、試料周りの環境と、緑色発光の強度の関連について調べた。システムは、CCDによる2次元像検出と分光検出を切り替えられるように検出系を切り替えられるように改造した。従来のシステムでは、ダイクロイックミラーを使用していたため、発光像は、フィルターを介しており、ある波長領域における強度の変化しか見ておらず、多分に推論を交えて結果の解釈を行っていたため、分光学的に結果を調べられることで、格段の研究の遂行が期待できる。 分光計測の結果、グリセロールの有無と発光スペクトルの違いを炭素膜上とSiN膜上でそれぞれ調べたところ、炭素膜上では、グリセロールの有無による発光スぺクトルの変化は見いだされなかったが、SiN膜上では、グリセロールの無い時は、炭素膜上でのスペクトルと概ね似ているが、グリセロールがある場合、スペクトルが異なることを見出した。これは、グリセロールが何らかの電荷供給体として作用していることを示唆している。今後、wet環境で、pHを変化させた時にどのような発光強度、スぺクトル変化が生じるかを調べ、蛍光増強効果が高く、強いCL強度を与える試料条件を探索し、これを用いて2次元CL像検出システムを確立する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
既存のシステムに分光器を取り付けることで、分光計測システムを2次元画像検出システムと両立できるシステムとして構築することができた。これにより、GFPの発行増強機構を解明するのに非常に強力なツールをえることができたといえる。その結果、下地や、試料周りの環境と発光スペクトルの関連について、幾つか知見が得られており、今まで得られている定性的な知見と併せて論文としてまとめることができた。既に得られている定性的な知見をスペクトル計測によりフォローしていくことで、今後更なる進展が期待できる。 また、イメージングのための電子走査については、既にその制御が出来つつあるので、順調に研究が推進できているといえる。 現状では、乾燥試料の蛍光増強に関しての実験であり、これに加え、溶液中でのGFPの蛍光増強条件についても今後調べる。GFPは蛍光顕微鏡で利用する場合、溶液中や細胞や組織などの生物試料内にて蛍光標識として利用され、GFPの使用時は常に浸水状態にあるといえる。したがって、乾燥状態での蛍光増強効果よりも溶液中での蛍光増強効果を調べ、増強条件を探索することは応用上非常に重要である。
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Strategy for Future Research Activity |
イメージング制御をするにあたり、電子ビーム走査と画像取得の同期が難しいことから、まずは、ビーム走査と画像取得を独立に行い、CL像を構築する条件を探ることを行う。 ビーム走査に対し、CCDカメラの記録を同期しない状態で行い、ビーム走査のタイミングに合わせて効率よく発光像が得られる露光時間と走査速度の長さの関係を確認し、発光像取得を行い、取得した動画像を静止画像に分割して、各走査位置における複数の発光静止画像を得て、この強度を積算し、積算値を各2次元位置における像強度として2次元CL像を作成する。また、導入した分光装置を用いて、試料の環境条件(pHや温度、電子照射条件等)に依存した発光特性を調べ、高い発光強度が得られる条件を探索する。 また、像構築が実現した後に、改めて、像計測と電子プローブ走査を同期させる方法について検討していく。
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