2015 Fiscal Year Research-status Report
生体内水構造のin vivo広帯域誘電分光による健常性評価
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15K13554
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
八木原 晋 東海大学, 理学部, 教授 (40191093)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | in vivo 広帯域誘電分光 / 非侵襲誘電測定 / 磁場勾配核磁気共鳴法 / 水構造 / フラクタル水構造解析 / 培養細胞 / リポソーム / モデルマウス |
Outline of Annual Research Achievements |
オリジナルな広帯域誘電分光(BDS:Broadband Dielectric Spectroscopy)装置を用い, in vivo生体測定を目指し,in vitro測定から各種成分測定を段階的に行った。径の異なるセミリッド同軸接触型(中心導体物理長がゼロ)電極および同軸型(中心導体物理長が非ゼロ)電極をそれぞれの計測系に適用して,水やアルコ-ルなどの標準液体系を用いて確認したところ,低周波域での測定系のインピーダンス校正になお不足が見られ,工夫が必要である。さらにゲル,イオン水流,エマルション,培養細胞,モデルマウスの摘出臓器の各系について予備測定を行い,次の進捗を得た。 ・イオン水流系:ビーカー内撹拌およびチューブ内循環系で同じ結果にならない部分があり,電極周囲の構成になお工夫が必要である。 ・ゲル系:高分子ゲルの体積相転移に伴う水構造のフラクタル解析によって,水構造の階層構造性を評価することが可能か検討中である。 ・エマルション系:O/W系のエマルションにおける水分子の分布状態をフラクタル解析から表現できる可能性が高くなった。またエマルション,リポソーム,細胞などの系に含まれる水のNMR拡散測定によって,水が拘束されている空間の情報を得る手順が構築されつつある。 ・培養細胞系:イヌ腎尿細管細胞や酵母の濃厚懸濁液だけでなく,後者の希薄分散系でも界面分極を観測できた。 ・モデルマウス系:(健常・メタボリック・敗血症)マウスの摘出臓器の水構造解析を行い,健常性や水素水飲水によって各臓器の含水量や分散状態に差があることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画においては,1年目の研究計画として,マイクロ波同軸ケーブルの0.33mm径のものを,時間領域反射法(TDR:Time Domain Reflectometry)およびBDS測定用の電極に改良するために,新たに電極を用意して加工し,計測から計測限界や誤差の周波数特性を把握することを予定していた。さらにマウス尾静脈近位側の血管内径0.4mmの部位にこの0.33mm径の電極を挿入して計測し,計測および解析上の問題点の抽出を行うことも予定されていたが,当該電極についてはその微細な構造から,十分な校正を行うことになお困難があり,今後さらに使用時の校正法に工夫が必要であることが明らかになった。このため,これらの一連の研究計画は2年目に回すことにした。 当初計画の一部の延期に伴って,2年目に予定していた循環イオン水流とモデルマウスの測定の予備的な測定を前倒しして遂行したところ,成果の項に記載したような各種の成果を得ることができた。低周波域測定系のインピーダンス校正はなお工夫が必要であるが,ゲルや生体系のGHz域測定による含水量解析とフラクタル水構造解析による水分子の分布解析が可能であること,およびイオン水流,エマルション,培養細胞,モデルマウスの摘出臓器の各系では観測された界面分極から不均一構造の評価が可能であることの二点が徐々に明らかになってきた。 これらの結果はいずれもin vivo計測のための成分別測定となっており,本研究計画の実施状況においては順序の入れ替えはあるものの,全体計画はそのまま維持できており,進捗状況は「おおむね順調」である。
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Strategy for Future Research Activity |
マウス臓器や血管内に挿入して水構造を測定して特徴づけるために,マイクロ波同軸ケーブルの0.33mm径のものをTDRおよびBDS電極に加工し,標準液体試料(水やアルコ-ルなどの溶媒)計測によってキャラクタライズした後,計測限界や誤差の周波数特性を明確にする。さらに生体組織やマウス尾静脈近位側の血管に挿入して計測し,イオン水流による血管モデル計測と比較して血流計測の最適化を重ねる。またメラノーマを含む病態モデルマウスと健常マウスの臓器計測を続け,血液や生体組織の健常性評価や識別を行う新たな生体健常性評価手法の構築を行う。これに伴って必要となる解析手法開発のために,血液や組織中の多様な階層的水構造とそのゆらぐ様子の緩和パラメータ解析などを再確認し,水構造ダイナミクスによる生体機能の健常性評価につなげる新たな生体計測手法を構築する。 従来はなかった水構造解析による健常性評価は,将来脳機能計測や医療分野など,関連する生物科学から医療,医用・生体工学まで,広い分野での応用が期待される新たな挑戦である。
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Causes of Carryover |
国際会議”International Conference on Electromagnetic Wave Interaction with Water and Moist Substances (ISEMA2016)”の参加登録・旅費の手続時期が年度末であったため,支払い時期が次年度になったことによる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
国際会議ISEMA2016に参加し研究発表を行うために必要な支払いに用いる。
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Research Products
(14 results)