2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K13561
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
市原 美恵 東京大学, 地震研究所, 准教授 (00376625)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
桑野 修 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 数理科学・先端技術研究分野, 研究員 (30511969)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 火山 / 流体 / 振動 / 圧力変動 / 周期性 / 噴出率 / 波動 |
Outline of Annual Research Achievements |
マグマだまりから火道を通って流体が火口から噴出するという火山噴火の模擬システムを実験室で作成し,その挙動を理解することを通して,実際の火山現象のメカニズムを理解することを目指している.特に,個々の素過程の集積によって生じる効果に注目している.これまで行って来た噴火模擬実験では,チャンバーの圧力蓄積効果と鉛直パイプ内の上昇流,液膜の破裂など複数の要素が組み合わせられている.その中で,ゆっくりとした上昇と急激な降下が繰り返し発生する火山の振動に良く似た圧力振動が見られた.今年度は,圧力変動が周期的な振る舞いから非周期的な振る舞いに変化する要因を追究した.実験データを詳細に解析した結果,周期の乱れは,パイプ内流れの加速と液膜を破ってのガス噴出の仕方に要因があることが明らかになった.液膜破裂時に作られた擾乱はパイプ壁の下降流とともに下方へ伝わり,次の上昇二相流の加速や液膜破裂までの時間に影響を与えている.ここで得られた知見からの類推で火山における繰り返し噴火の非周期性について考察し,噴出物の火道内への再降下のような下降流と火道内の上昇流の相互作用が要因となっている可能性を指摘した.本実験はスケール化を目指したものではないが,粘性の低いマグマが間欠的に噴き出すストロンボリ式噴火のスケール化実験と誤解されやすい.数理モデルを整理することにより,本システムが,より粘性の高いマグマのチャンバーから火道への流れによる振動と相似性の高いモデルであることを明確にした.その他,ガスやマグマの噴出率と波動の関係に焦点を当てた室内実験や火山の観測データの解析を行った.その結果,低粘性流体の表面で気泡が発生する波動や,より粘性の高いマグマの連続的爆発噴火におけるマグマ破砕面で発生する波動など,特定のメカニズムによる地震波・空振波の解析を行うことによって,両者の関係を特定することの可能性を示した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
年度前半に,鉛直パイプ内気液二相流とガスチャンバーを組み合わせた実験結果と数理モデルについて論文にまとめ始めたところ,パラメータの取り方の間違いに気付いた.その修正を行うと,これまで実験結果とよく一致していたモデルが合わなくなった.その後,データの再解析とモデルの再検討を行い,論文投稿を行った.しかし,残念ながら受理されなかった.本研究は,噴火現象をそのまま縮小コピーしようとする実験ではなく,波形と数理モデルの相似性という視点で模擬し,その模擬システムの理解から,噴火現象を支配する新しい要因を見出そうとするもので,これまでの実験火山研究とは異なるアプローチである.その点をより明確にして,再投稿論文を準備中である.当初の研究計画では,マグマだまりの発泡まで含む包括的な噴火模擬実験に取り組む予定であった.しかし,内部発泡の効果を含まず外部からガスを一定流量で供給する実験の中で,ガスの流量とガスチャンバーの体積を変えるだけで,驚くほど多様な振動現象が発生することが分かり,その理解に注力することにした.一方,クエン酸と水あめを混合して発泡させ噴出させる噴火模擬実験は,東京大学5月祭や東京地震研究所一般公開における,学生デモンストレーション実験に活用した.水あめの粘性だけでなく,発泡反応速度を水あめ温度で調節するなどの工夫によって噴出の形態を変化させることができた.噴火模擬実験は,火山噴火の仕組みを分かりやすく説明するアウトリーチ活動として有効であった.
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Strategy for Future Research Activity |
当初2年間で完了する予定であったが,平成29年度に期間を延長して実施する.今年度の主な作業は,これまでの成果を論文等にまとめることである.まず,鉛直パイプ内気液二相流とガスチャンバーを組み合わせた実験結果と数理モデルについて論文を完成させる.また,ガスやマグマの噴出率と波動の関係に焦点を当てた研究については,室内実験をさらに進め,成果を国内外の学会で発表する予定である.
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Causes of Carryover |
年度前半に,鉛直パイプ内気液二相流とガスチャンバーを組み合わせた実験システムに対する数理モデルについて,パラメータの取り方の間違いに気付いた.その修正とモデルの改良に時間を要した.その後,論文を投稿したが,受理されなかった.査読者のコメントについて検討し,再度投稿を行う予定である.また,実験の中で,気泡が流体中から抜ける直前に特徴的な波動現象が見つかり,噴出率との関係をより詳しく調べることにした.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
ガス噴出率と波動の関係に焦点を当てた研究については,8月に米国で開催される国際火山学地球内部化学連合大会(IAVCEI)において発表する予定である.今年度の予算は,主に,その旅費に使用する.また,鉛直パイプ内気液二相流とガスチャンバーを組み合わせた実験結果と数理モデルについて論文を完成させる.
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