2015 Fiscal Year Research-status Report
台風の発達・維持に関する新たなフィードバック仮説の構築と検証
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15K13569
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
川村 隆一 九州大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (30303209)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 台風 / 熱帯低気圧 / モンスーン / 水蒸気輸送 |
Outline of Annual Research Achievements |
台風による遠隔海域からの水蒸気の集積効果が台風自体を強化するというフィードバック仮説を検証するために、(1)領域気象モデルを用いた海面水温感度実験、(2)3次元同位体領域モデルを用いた台風中心近傍の水蒸気起源の推定、(3)非静力学雲解像モデルによる流跡線解析を実施している。 (1)については、水蒸気コンベアベルト(MCB)を付随している典型的な台風を事例として、移動ネスティング手法を用いたインド洋・南シナ海の海面水温(SST)感度実験を実施した。高温・低温SST実験の結果から、台風の最盛期以降に台風の強度と進路が系統的に変化することが見出された。 具体的には、インド洋および南シナ海のSSTが高いと、北西太平洋の台風の発達が抑制され、対照的に、同海域のSSTが 低いと台風の強度が増大することがわかった。このような系統的な差異は、インド洋・南シナ海から台風中心近傍へと延びる、対流圏下層のMCBを介した水蒸気供給の強化・弱化と 密接に関連していた。 SSTが高い状態ではMCBが南シナ海上で断裂してしまい、遠隔海域から台風システム内に流入する水蒸気量が減少する。その結果、台風の強度は弱化し、台風の進路も東偏する。遠隔海域のSST変化もまた台風の強度や進路に実質的な影響を与えている証拠を始めて示した。 (2)については、台風中心近傍の構造を考慮した水蒸気起源解析により、同じ事例の台風の最盛期後半には台風直下の海域起源を除くと、遠隔海域起源は可降水量で全体の約61%を占め、凝結量で全体の約60%を占めている事などが明らかになっている。(3)については、現在前方・後方流積線解析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
領域気象モデルを用いた海面水温(SST)感度実験から、遠隔海域のSST変化もまた台風の強度や進路に実質的な影響を与えている証拠を始めて系統的に示したことは大きな成果である。 3次元同位体領域モデルを用いた台風中心近傍の水蒸気起源の推定、ならびに非静力学雲解像モデルによる流跡線解析も既に着手し、まだ一部ではあるが興味深い結果が得られ始めている。したがって、おおむね計画通りに進んでいると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)3次元同位体領域モデルを用いた台風中心近傍の水蒸気起源の推定については、早急に残された課題を解決し、研究成果をまとめていきたい。 (2)非静力学雲解像モデルによる台風シミュレーションについては、他の台風事例についても流跡線解析等を行い、一般化を図っていきたい。
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Causes of Carryover |
学生によるデータ解析補助作業(賃金)が、年度末の学生の都合により、計画時の100%を執行できなくなったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は、早々にデータ解析補助作業を進めていく計画である。
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Research Products
(6 results)