2015 Fiscal Year Research-status Report
手軽に高精度で、大気中の氷晶核の数濃度を計測できる手法の検証
Project/Area Number |
15K13570
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Research Institution | National Institute of Polar Research |
Principal Investigator |
當房 豊 国立極地研究所, 研究教育系, 助教 (60572766)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
塩原 匡貴 国立極地研究所, 国際北極環境研究センター, 准教授 (60291887)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 氷晶核 / エアロゾル |
Outline of Annual Research Achievements |
大気中に含まれる氷晶核(氷形成能力を有するエアロゾル粒子)の存在は、極微量であっても、雲形成の初期過程に多大な影響を及ぼす。しかし、その計測は技術的に難しいとされており、観測データが非常に不足している。水滴凍結法(エアロゾル粒子を含む水滴を低温ステージ上で冷やすことで、それらの粒子の氷核活性を計測する手法)は、雲生成チャンバーや氷晶核計を用いた方法と比較し、より手軽に氷晶核を計測できる技術として知られている。しかし、従来の水滴凍結法は、エアロゾル粒子を含まない水滴であっても、理論値よりもかなり高い温度で凍結し始めてしまうため、約-20℃以下の温度での氷晶核の計測には適さないと考えられてきた。 そこで平成27年度には、従来の水滴凍結法にいくつかの改良を施すことで、より幅広い温度範囲でも適用できる独自の実験系(CRAFT:Cryogenic Refrigerator Applied to Freezing Test)の開発に取り組んだ。このCRAFTを使用した場合には、エアロゾル粒子などの不純物を含まない水滴であれば、約-30℃に達してもほとんど凍結しないことを確認している。また、国際的な氷晶核計測プロジェクト(INUIT:Ice Nuclei research UnIT)が氷晶核計測装置の性能評価用の標準粒子として指定している鉱物粒子(illite NX)や微生物粒子(Snomax)などを用いた比較実験にも取り組んだ。その結果、CRAFTでは、従来の水滴凍結法、雲生成チャンバーや氷晶核計を用いた方法では不可能であった約-30℃~0℃と非常に幅広い温度範囲内での氷晶核計測が可能なことを確認している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究を推進する上での最難関課題は、約-20℃以下でも適用可能な水滴凍結法を探索することになると想定していた。よって、初年度中に、約-30℃~0℃の温度範囲で適用可能である新たな水滴凍結法を確立できたことは、世界的にも前例がなかった成果であり、当初の想定以上の非常に大きな進展であった。その一方で、これまでの実験は、標準試料を用いた室内実験が中心であったため、CRAFTを用いた計測技術が、大気中での氷晶核の数濃度の計測にも適用可能であるかを検証していくことが、平成28年度の主な課題になると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
新たに確立したCRAFTを用いた計測技術が、大気中での氷晶核の数濃度の高精度計測にも適用可能であるかを検証する。具体的には、米国(コロラド州およびユタ州での実施を想定)にて、コロラド州立大学が保有する氷晶核計(CFDC:Continuous Flow Diffusion Chamber)との同時計測による比較実験を1~2週間程度かけて行うことを計画している。また、上記の比較実験により、CRAFTによる大気中での氷晶核計測の有効性を実証することができれば、日本国内や極域などの様々な場所での実用化を進める。
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Causes of Carryover |
初年度は、水滴凍結法用の実験系に使用する超低温恒温槽等を他の予算で購入し、また室内実験を中心とした研究活動を進めてきたため、物品費や旅費を節約することができた。一方、次年度は、大気中での本計測技術の検証実験を数多く実施することを計画しているため、野外観測用の旅費や物品費が多く必要となると考えている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
大気中のエアロゾル粒子の採取用のサンプラー等を購入する。また、米国でのコロラド州立大学の研究グループとの共同実験や国際会議での発表等を計画しているため、そのための旅費として使用する予定である。
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Research Products
(14 results)
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[Journal Article] Sources of organic ice nucleating particles in soils2016
Author(s)
Hill, T. C. J., DeMott, P. J., Tobo, Y., Froehlich-Nowoisky, J., Moffett, B. F., Franc, G. D., Kreidenweis, S. M.
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Journal Title
Atmospheric Chemistry and Physics Discussions
Volume: -
Pages: -
DOI
Open Access / Int'l Joint Research
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