2016 Fiscal Year Research-status Report
低・高エネルギー粒子、及びX線の同時分析機能実現に向けたハイブリッド検出系の試作
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15K13574
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
平原 聖文 名古屋大学, 宇宙地球環境研究所, 教授 (50242102)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 粒子検出器 / 機器開発 / 半導体検出器 / マイクロチャンネルプレート / ハイブリッド検出器 / 宇宙探査 / ビームライン / 較正実験 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、最先端の宇宙探査衛星計画である「あらせ(ERG)」衛星に実際に適用された高エネルギー電子用半導体検出器である片面ストリップ型シリコン検出器(SSSD)の予備品を、昨年度の試作に用いたマイクロチャンネルプレート(MCP)に結合させてハイブリッド検出器を構成するための基礎設計を行った。このSSSDは数百ミクロン幅で32チャンネル独立のストリップ電極により粒子の入射・通過位置を検出可能であり、MCPからの電子雲の検出にも対応可能である。更には、Application specific integrated circuit(ASIC)技術により、超小型・軽量、省電力でSSSDからの32チャンネルの信号を処理可能であるため、MCPと組み合わせる事で、低エネルギー粒子入射時にはMCPで生成された電子雲の検出を、高エネルギー粒子入射時にはSSSD内部で生成された信号の読み出しが可能となる。このSSSDは実際にジオスペース探査衛星「あらせ」に搭載されて宇宙空間での高エネルギー電子の検出を実現しており、本研究ではこのSSSDの予備品を活用して、MCPとSSSDのハイブリッド検出器を世界で初めて製作する事を目指して、それらの機械的結合に向けた基礎設計を行った。具体的には、MCPで生成された電子雲を電気的に引き込んで、SSSDの金属電極に入射させるための電位配位の検討、及び、MCPアセンブリーへのSSSDの機械的取り付け構造の検討を行った。このSSSD基盤上にはASICやチップ素子が多数実装されており、それらへの機械的・電気的干渉を避ける為の措置を考案した。また、ハイブリッド検出器開発における較正実験を円滑に行う上で必要となる高エネルギー粒子ビームラインのビームプロファイル取得システムの開発も並行して実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度に適用を計画していた最先端の半導体検出器である「あらせ」衛星搭載用片面ストリップ型シリコン検出器(SSSD)は、本開発研究に使用可能な実機が既にある状態であったが、このSSSDの詳細な情報を取得するためには、SSSDの本来の目的である「あらせ」衛星での観測結果を確認する必要があった。また、SSSDの構造上の詳細なデータを入手するには、SSSDによる「あらせ」衛星観測を担当する研究者からの情報提供が必要であるが、「あらせ」衛星計画自体の運用上の問題・遅延からそれらが困難であったため、最終形態としてのハイブリッド検出器の製作が遅れている状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度では、「あらせ」衛星搭載用として開発され、予備品が利用出来る片面ストリップ型シリコン検出器(SSSD)と、現有のマイクロチャンネルプレート(MCP)アセンブリーを機械的・電気的に結合させ、本研究計画の最終目的であるハイブリッド検出器の試作品を完成した後、実際に高エネルギー・低エネルギー粒子、X・ガンマ線の照射を、ビームライン・真空槽を用いて実施する。ここで利用するSSSDとMCPに関しては、これまでの宇宙探査計画にて振動・温度試験を実施されているという点に鑑みて、新たにそれらの環境試験を行う必要がない点は、研究開発上、非常に有利に作用する。
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Causes of Carryover |
SSSDとMCPを機械的・電気的に結合させて実際にハイブリッド検出器の試作品を製作する時期が遅れたため。具体的には、各コンポーネント(SSSD、MCP)を、アルミニウム製真空用特殊治具により機械的に結合しハイブリッド検出器を構成し、かつ、信号読み出しラインと電圧・電源ラインを設置する事で電気的な配線を施し、それぞれ単独で機能する状態を実現させるための機械的構造物と電気的配線、及び制御・データ取得系の構築が、並行して進んでいる宇宙探査衛星計画との用務上の問題で遅延したため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
SSSDとMCPを機械的・電気的に結合させる真空用特殊治具を製作し、ハイブリッド検出器試作品を完成させ、真空中でのビームラインによる粒子照射、及びX・ガンマ線照射により、性能評価試験・較正実験を行う。その為、真空部品・特殊治具の購入・製作を要する。また、これらの試験・実験を行うビームラインの整備の為、真空部品の調達と組み付けを実施する。
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