2017 Fiscal Year Research-status Report
低・高エネルギー粒子、及びX線の同時分析機能実現に向けたハイブリッド検出系の試作
Project/Area Number |
15K13574
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
平原 聖文 名古屋大学, 宇宙地球環境研究所, 教授 (50242102)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 粒子検出器 / 機器開発 / 半導体検出器 / マイクロチャンネルプレート / ハイブリッド検出器 / 宇宙探査 / ASIC / 較正実験 |
Outline of Annual Research Achievements |
探査機・観測ロケットによる宇宙空間でのプラズマ・中性粒子、極端紫外線、X・γ線の計測は太陽地球系物理学における重要な観測であり、本研究では、これらの観測に従来から活用されてきた2種類の検出器であるマイクロチャンネルプレート(MCP)と半導体検出器(SSD)を構造的・電気的に結合させることで、お互いの計測上の長所を生かし欠点を補いあう新規の一体型ハイブリッド検出器を設計・製作し、各種試験と性能評価・較正実験を行った。MCPは比較的低いエネルギーの粒子・光子の検出に対して極めて有効な素子であるが、出力信号を処理する段階で入射エネルギーの情報が失われてしまう。SSDは高エネルギー粒子、あるいは透過性の高いX・γ線に対しては 、出力信号の波高分析によりエネルギー情報を取得可能である一方、低エネルギー粒子に対しては感度がない。これらの相反する特性を相補的・積極的に取り入れ、一体型ハイブリッド検出器として機能させることに成功した。また、宇宙プラズマ・中性粒子、及びEUV等の検出において計数測定に広く用いられているMCPと、よりエネルギーが高い粒子・光子に対して用いられるSSDを組み合わせたハイブリッド検出系を試作し、所有するビームラインによる真空内粒子照射試験を実施するに当たり、ビームラインで照射されるビームの特性を取得するビームモニターの開発も並行して行った。これにより、以下の2点の可能性を開拓した。1:ASIC技術を活用したストリップタイプのSSDと組み合わせ、SSDの読み出し電極を電荷収集電極として用いることで、MCPの小型・高精度の位置検出系を構築可能となった。2:エネルギー・計数の測定が可能だが、入射粒子・光子のエネルギー情報は取得できないため、MCP単独の検出系では雑音源となる宇宙放射線粒子や宇宙線の混入に関して、SSDからの信号処理を活用することによる除去を可能となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ハイブリッド検出系の新規開発に適用すべき高エネルギー粒子半導体検出器について、既に探査衛星計画で宇宙実証された、より高性能なストリップ型シリコン半導体検出器(SSSD)のスペアモデルが利用可能という最適の環境が得られたが、読み出し回路の改修が必要となり、それを担当する研究協力者の業務量が探査衛星計画の運用等の負担により想定以上に増大し、SSSDのハイブリッド検出器系への組み込みが遅れているため。
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Strategy for Future Research Activity |
既に探査衛星計画で宇宙実証された、より高性能なストリップ型シリコン半導体検出器(SSSD)のスペアモデルを用いて、既存の大面積MCPと組み合わせ、既に試作に成功したハイブリッド検出器を大幅に改良する検出器系を作製し、我々の実験室で運用している荷電粒子ビームラインにより機能試験・較正実験を行う。本ビームラインでは様々なエネルギーや入射角度を設定可能であり、電子に加えてイオン種に関しても数種類のビームを照射可能であるため、新型ハイブリッド検出器系における特性が、多様なパラメターに対してどの様に依存するかを調査する。
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Causes of Carryover |
ハイブリッド検出系の新規開発に適用すべき高エネルギー粒子半導体検出器について、既に探査衛星計画で宇宙実証された、より高性能なストリップ型シリコン半導体検出器(SSSD)のスペアモデルが利用可能という最適の環境が得られたが、読み出し回路の改修が必要となり、それを担当する研究協力者の業務量が探査衛星計画の運用等の負担により想定以上に増大し、SSSDのハイブリッド検出器系への組み込みが遅れているため、2019年度での経費使用が必須となった。今後は、高性能ストリップ型シリコン半導体検出器(SSSD)のスペアモデルと既存の大面積MCPと組み合わせ、既に試作に成功したハイブリッド検出器を大幅に改良する検出器系を作製し、我々の実験室で運用している荷電粒子ビームラインにより機能試験・較正実験を行う。本ビームラインでは様々なエネルギーや入射角度を設定可能であり、電子に加えてイオン種に関しても数種類のビームを照射可能であるため、新型ハイブリッド検出器系における特性が、多様なパラメターに対してどの様に依存するかを調査する。
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