2015 Fiscal Year Research-status Report
東海沖の大規模生物群集における貝殻の放射性炭素年代を用いた間欠的メタン湧出の検証
Project/Area Number |
15K13576
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
芦 寿一郎 東京大学, 新領域創成科学研究科, 准教授 (40251409)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 深海環境 / メタンハイドレート / 化学合成生物群集 / 海洋探査 / 冷湧水 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度の研究実績は,1)調査航海における研究と2)試料分析による研究に大きく分けられる.「調査航海」は8月に東海沖の第2天竜海丘の南西側斜面で実施し,2日間の無人探査機を用いた海底調査を行った.シロウリガイの巨大コロニー地点においては,海面付近から海底直上の複数の深度の海水試料を採取することができた.また,深海曳航式のサブボトムプロファイラー探査を実施し,貝コロニー周辺の良好な地下構造断面データを得ることができた.船上において地形補正と揺動補正を施した結果,地下断面には小規模な断層が多数見られ,地溝状の構造が発達していることが明らかになった.断層の分布の広がりは海底面の音響反射強度から推定された貝コロニーの分布とよく一致した.これらより,流体湧出が断層に沿ったものであることが示唆された.これらの構造は,この海域の既往実施の地形地質情報から東北東-西南西方向の小台場断層系の活断層の横ずれ変位にともなうものであると解釈される.「試料分析」としては,シロウリガイの巨大コロニー地点より採取されていた貝試料の放射性炭素年代測定を行った.生きていた貝と風化の進んだ貝の貝殻で年代に優位に差のあることを確認した.これらのデータをもとに年代補正モデルを用いた補正を実施し,これまでに報告されている歴史地震との比較を行った.また,採取した海水の放射性炭素年代測定を実施した.予察的な結果は底層水の年代が生きていた貝の貝殻の年代とほぼ一致することを示した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
貝および海水の年代は機関の施設において順調に測定を行っている.調査航海は良好な海況のもと地下構造データを取得することができた.試料採取は機器の動作不良のため新規の取得はできなかったが,既に得られている試料を用いることにより当初の目的を十分に達成することが可能である.試料の測定および地下構造探査断面の解析の進捗は当初予定していた目標を達成している.
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Strategy for Future Research Activity |
初年度は調査航海により試料・データの取得を行なっており,海水,地下構造データの取得は完了している.そのため,2年度は海域における追加の試料・データの取得は不要であり,室内における分析,データ解析,およびそれらの考察を中心とした研究を行う.貝殻の放射性炭素年代測定は前年度に引き続き実施する.前年度の結果と合わせて年代補正モデルの検証を行い貝の年代の見積もりを行う.貝の成長線に沿った組成が年代に影響を与える可能性があるため電子顕微鏡を用いた貝殻断面の組織の観察とEPMAを用いた組成分析を行う.地下構造については,深海曳航式のサブボトムプロファイラーの記録は,船上における簡易的な地形補正と揺動補正に対して,曳航体の姿勢の情報を入れた,より高度な補正を実施し,高解像度の断面の作成を行う.また,地形データとの統合と断層・褶曲の形態から変形様式を明らかにする.地質構造と貝および底層海水の年代を総合的に解釈し,貝の巨大コロニー形成の時期と成因を明らかにする.また,歴史地震との関係について考察する.成果を国内外の研究集会・学会で公表するとともに,学術雑誌に投稿する.
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Research Products
(2 results)